fuRo(千葉工業大学):原発や被災地に入るロボットと、乗れるロボットを作る研究センター

薄暗い建物の中で、がれきの階段をキャタピラで登っていく調査ロボットを、拳を握って見守る茶髪の男子大学生。「千葉工業大学のfuRo」「原発に入るロボット」「千葉で目指せるロボット」の文字。

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

人が入れない原子力発電所の建物に入って、写真を撮り、放射線を測ってくるロボット。乗っている人と一緒に体を傾けて曲がる、馬のような乗り物ロボット。この2つを作ったのが、千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター、通称「fuRo(フューロ)」です。

fuRo は、ふつうの研究室とは少し違います。大学の中にある「研究センター」で、ロボットを作るプロの研究員が集まっています。そして千葉工業大学は、キャンパスが2つとも千葉県の習志野市にあり、安房高校から私立大学でいちばん多く合格している理系の大学です。研究室から大学を見るこのコーナーの、ロボットの1つ目は fuRo です。

目次

ひとことで言うと、何の研究?

操縦の席でジョイスティックを握り、離れた場所のロボットを夢中で動かす茶髪の男子大学生。画面の吹き出しには、がれきの中を進むロボットの様子。「人の代わりに危ない場所へ」の文字。

fuRo の研究をひとことで言うと、人が行けない場所に代わりに行くロボットと、人の体の力を広げるロボットを、作って社会で使えるところまで持っていく研究です。

研究と言っても、紙の上で終わりません。部品を設計し、組み立て、走らせ、壊れたら直す。そのくり返しで、本当に現場で動くロボットを作ります。デザインにもこだわっていて、「機能とデザインの一体化」を掲げています。

公式サイトに並ぶロボットを、分野ごとに分けるとこうなります。

分野代表のロボット中学生向けに言うと
災害対応Quince(クインス)、櫻壱號さくらいちごう、櫻弐號(さくらにごう)原発や壊れかけた建物など、人が入ると危ない場所に代わりに入って調べる
乗り物(モビリティ)CanguRo(カングーロ)、ILY-A、Raptor形を変えたり、ぶつかる前に止まったりする、ロボットの技術が入った乗り物
人型・脚のロボットmorph3、Halluc II人のように動く、虫のように歩く。体の動かし方そのものを研究する
くらしと仕事CHERI、T-iROBO Rebar天井裏を点検する、工事現場で鉄筋をしばる。人がやると大変な作業を代わる

出典:千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)「fuRoとは」「ロボット紹介」(furo.org)。分け方と中学生向けの言い方は小池がまとめた

ガラスケースの中に、黒い胴体から何本もの脚が伸び、脚の先に車輪がついた虫のような形のロボットが置かれている
東京スカイツリータウンキャンパスに展示されている、脚の先に車輪のついたロボット(2026年)
写真:Syced/CC0(Wikimedia Commons)

動画で見る

fuRo のロボットは、文章より動いているところを見るほうが早く伝わります。まずは CanguRo です(2分33秒)。ロボットが人の後ろをついて走り、そのあと変形して、人が乗る乗り物になります。

次は ILY-A です(1分58秒)。1台の乗り物が、乗る形・キックボードの形・荷物を運ぶ形などに次々と形を変えます。ベビーカーくらいの大きさなので、どこで使うかを想像しながら見ると面白いです。

最後は、所長の古田貴之さんが、SNSで集まったロボットの質問に次々と答える回です(14分)。ロボット作りのプロがふだん何を考えているのかが、いちばんよく分かる1本です。

動画:fuRomovie(fuRo の YouTube 公式チャンネル)、WIRED.jp(YouTube 公式チャンネル「Tech Support」)

研究センターから生まれたもの

海沿いの遊歩道で、白い馬のような形の一人乗りロボットにまたがり、風を切って満面の笑顔で走る若い女性。「乗れるロボットも作っている」の文字。

fuRo の名前が全国に知られたのは、2011年の東日本大震災のあとです。

福島第一原発に入った Quince

事故を起こした福島第一原子力発電所では、建物の中の放射線が強く、人が長く入れませんでした。そこで使われたのが、千葉工業大学と東北大学などのグループが作っていた災害対応ロボット Quince です。原発で使う版は、東京電力に頼まれて千葉工業大学が1校で作りました。

Quince は原子炉げんしろの建物の中に入り、中の様子をくわしく写真に撮り、どこに放射線が強いかの地図を作り、空気中のちりを集めてきました。人の代わりにロボットが先に調べたことで、作業する人が浴びる放射線を減らし、作業の日数も短くできました。

出典:fuRo「Quince」(furo.org/ja/works/quince/)。重さ26.4kg(同「Quince 仕様」)

次の世代:櫻壱號と櫻弐號

Quince のあとに作られたのが「櫻(さくら)」のシリーズです。櫻壱號は、原発の地下の、せまくて急な階段をおりて調べるための小さなロボットで、2012年に発表されました。重さは32kg。福島の原発のほか、2016年の熊本地震で壊れかけた宇土市役所の調査にも入りました。

出典:fuRo「櫻壱號」(furo.org/ja/works/sakura/)、fuRo 公式動画「櫻壱號(サクラ イチゴウ)」の説明

キャタピラで走る黒い箱のような車体に、細い柱とその先の丸いカメラがついた災害対応ロボット。車体の横に白い字で sakura と書かれている
東京スカイツリータウンキャンパスに展示されている、「sakura」と書かれた災害対応ロボット(2026年)
写真:Syced/CC0(Wikimedia Commons)

櫻弐號は、Quince で分かったことを生かして、千葉工業大学が一から作ったロボットです。重さ47.5kgで、60kgまでの荷物を積み、45度の急な階段をのぼりおりできます。ほこりや水が入らない作りで、アームを付けるとがれきをどけたり、調べるための材料を集めたりもできます。この技術は三菱重工業に貸し出され、三菱重工が作って売る計画になりました。

出典:fuRo「櫻弐號」(furo.org/ja/works/sakura2/)

キャタピラで走る箱のような形のロボットが、急な階段をのぼっていく様子を見てください(1分9秒)。

熊本地震のときの調査の映像もあります(2分25秒)。人が入ると危ない、壊れかけた市役所の中をロボットが進み、カメラで中を確かめていきます。ロボットが本当に人の代わりになる場面です。

動画:fuRomovie(fuRo の YouTube 公式チャンネル)。地震の日付は動画の説明による

乗れるロボット

もう1つの柱が乗り物です。2018年に発表した CanguRo は、プロダクトデザイナーの山中俊治さんと一緒に作りました。ふだんはロボットとして持ち主のそばにいて、買い物を手伝ったり、スマホで呼ぶと自分で走って来たりします。乗るときは変形して、曲がるときに車体が傾き、ぶつかりそうになると自分でブレーキをかけます。

2015年の ILY-A は4つの形に変わる1人乗りの乗り物で、飛び出してきた人や物を見つけると自動で速度を落とします。2024年の Raptor は、上と下が分かれて合体し、上の部分を取り替えると別の乗り物になります。Raptor は2026年5月から、スカイツリータウンの展示にも加わりました。

出典:fuRo「CanguRo」「ILY-A」「Raptor」(furo.org/ja/works/)。fuRo は CanguRo を売っていない(公式ページに、写真を勝手に使った海外の偽の通販サイトへの注意がある)

どんな人が研究しているか

夜の作業場で、動かなくなったロボットの足回りを、悔しそうに歯を食いしばってドライバーで直す作業着の若い研究員の男性。「壊れたら直す、その繰り返し」の文字。

fuRo を率いるのは、所長の古田 貴之(ふるた たかゆき)さんです。

  • 1968年、東京都生まれ。青山学院大学で機械工学を学び、2000年に博士(工学)を取りました
  • 2000年から、国の研究機関(科学技術振興機構)で、人型ロボットを作るグループのリーダーを務めました
  • 2003年6月に fuRo の所長になり、今も所長です

fuRo は、古田さんたちの研究チームが、全員そろって千葉工業大学に移ってきてできた研究センターです。今のメンバーは、所長・副所長(友納 正裕さん)・室長(先川原 正浩さん)と、研究員がおよそ15人。場所は千葉工業大学の津田沼キャンパスの8号館8階です。

出典:fuRo「メンバー紹介」「古田貴之」「fuRoとは」「研究センター概要」(furo.org、2026年10月11日に確認)。所属する学生の数や卒業生の進路は公式に出ていないので書いていない

ふつうの研究室は、教授1人と学生で作ります。fuRo は、大学の学校法人が直接持っている研究センターで、プロの研究員がロボットを作る組織です。ここが松尾研のような研究室との大きな違いです。

fuRo に近づくには

夕方の学校の図書室で、大学の案内の冊子を広げたまま、どこから目指せばいいか分からず眉を下げて考えこむ館山中の女子。「入口は学科と大学院」の文字。

fuRo は研究室ではないので、「fuRo 研究室に入る」という入試はありません。学生として近づく入口は、千葉工業大学のロボットの学科です。

道流れ
千葉工業大学に入る(学部から)千葉工業大学 先進工学部 未来ロボティクス学科に入る → 機械・電気・電子・情報・制御をまとめて学ぶ → 3年生の前期に研究室を決め、4年生で卒業研究
ほかの大学から入る(大学院から)理系の大学を卒業する → 千葉工業大学大学院 先進工学研究科 未来ロボティクス専攻(修士課程)の入試に受かる

出典:千葉工業大学「未来ロボティクス学科」、同「大学院入試 修士課程」(令和9年度の日程。2027年春入学の3月試験は2027年3月9日)、未来ロボティクス学科サイト(3年生で研究室に配属)

晴れた空の下、駅前の通りの奥に、ガラス張りの高い校舎が2棟と白い低い校舎が並ぶ大学のキャンパス
千葉工業大学の津田沼キャンパス(千葉県習志野市・2012年)。fuRo はこのキャンパスの8号館8階にある
写真:掬茶/CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

未来ロボティクス学科のサイトは、この学科を選ぶ理由の1つに fuRo を挙げていて、学生が fuRo の活動を見たり、参加したりする機会があると書いています。ただし、学生が fuRo に入るための決まった手続きは公式に書かれていません。fuRo の近くで学びたい人は、オープンキャンパスで学科の先生に直接聞くのがいちばん確かです。

出典:千葉工業大学 未来ロボティクス学科「千葉工業大学の未来ロボティクス学科を選ぶ10の理由」

千葉工業大学は、安房高校から2026年春に延べ53人が合格した、私立大学でいちばん多い大学です。学部の1・2年は新習志野、3・4年と大学院は fuRo のある津田沼で学びます。未来ロボティクス学科は、卒業生の27.6%が大学院に進みます。研究室は大学院からもう一度選び直せるので、ほかの大学のロボットや機械の学科で4年間学び、大学院で千葉工業大学に来る道もあります。

出典:安房高校 進路指導部「令和7年度 進路状況報告」、千葉工業大学「卒業(修了)者数・進路状況」令和7年度、旺文社 パスナビ(キャンパスと学年)。くわしくは千葉工業大学の紹介の記事にまとめた

中高生のうちにできること

高い建物の中の明るい展示室で、ガラス越しに並ぶ本物のロボットを前に、目を見開いて感動する館山中の男子。窓の外には東京の街並み。「まずは本物を見に行く」の文字。

いちばんのおすすめは、東京スカイツリータウンの千葉工業大学の展示を見に行くことです。東京ソラマチの8階にあり、入場は無料。fuRo のロボットが並び、災害対応ロボットの操縦シミュレーターもあります。

見る・参加するいつ・どこで
千葉工業大学 東京スカイツリータウンキャンパス10:30〜18:00、入場無料(12月29日〜1月1日は11:00〜17:00、2026年12月7日は休館)。東京ソラマチ8階
千葉工業大学 オープンキャンパス次は2027年3月28日(日)10:00〜14:30、津田沼キャンパス。予約は要らず、出入り自由
fuRo の高校での講演fuRo が日本各地の高校へ行き、講演・ロボットのデモ・実習をしている。学校から千葉工業大学の入試広報課へ問い合わせる

出典:千葉工業大学 東京スカイツリータウンキャンパス(cit-skytree.jp、2026年10月11日に確認)、千葉工業大学 受験生サイト「オープンキャンパス日程」、fuRo「Events」。日程は変わることがあるので、行く前に公式サイトを確かめること

白い展示台の上に立つ、白と銀色の人型ロボット。頭に横長の目のような部品があり、腕と脚の関節に金属の部品が見える
東京スカイツリータウンキャンパスに展示されている人型ロボット(2026年)
写真:Syced/CC0(Wikimedia Commons)

シミュレーターができたのには理由があります。東日本大震災のとき、ロボットは数台しかなく、操縦できる人が足りませんでした。練習で本物を壊すと、現場で使えるロボットが減ってしまいます。そこで、たくさんの人が一度に練習できるようにゲームのような操縦の練習機を作りました(58秒)。

動画:fuRomovie(fuRo の YouTube 公式チャンネル)。作った理由は動画の説明による

ロボットを作るには、4つの教科が全部要ります。ロボットの腕がどこまで届くかは数学の三角比とベクトル、モーターの力や車輪の回転は物理、ロボットを動かす命令は情報(プログラミング)、世界の研究を読むのは英語です。中学生のうちは、数学の関数と図形、理科の力と電気から逃げないこと。これが fuRo にいちばん近づく勉強です。

塾長 小池

ロボットは「見る・動かす・考える」を全部つなげる仕事です。まずはスカイツリーで本物を見てください。見たら、数学の見え方が変わります。

まとめ

放課後の理科室で、自分で組み立てた小さな車輪のロボットが動き出すのを、身を乗り出してワクワクしながら見つめる館山中の女子。「ロボットは数学と物理で動く」の文字。
  • fuRo は、千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター。研究室ではなく、プロの研究員がロボットを作る研究センター
  • 福島第一原発に入った Quince、熊本地震で市役所を調べた櫻壱號など、人が行けない場所で働くロボットを作ってきた
  • 乗れるロボット CanguRo や、形の変わる乗り物 ILY-A・Raptor も作っている
  • 所長は2003年からずっと古田貴之さん
  • 学生として近づく入口は、未来ロボティクス学科(3年生で研究室)か、大学院の未来ロボティクス専攻
  • 中高生は、スカイツリーの無料の展示とオープンキャンパスへ。近づく勉強は、数学・物理・情報・英語

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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