米1粒から始めて、国が傾く話

豊臣秀吉が、将棋盤のマスに米を1粒、2粒、4粒と倍に置いていき、山になったのを見ている

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

まなぶ君の数検のページで、将棋盤に米粒を並べてにこにこしている人。豊臣秀吉です。

今日は、秀吉が米粒の計算で一本取られたという話をします。読み終わったら、紙を1枚用意してください。あとで使います。

目次

「米を1粒ください」

金色のふすまの広間で、豊臣秀吉が、ひざまずいた家来の差し出す米1粒をのせた小皿を見て、大笑いしている。「たった1粒で いいの?」の文字。

秀吉のそばに、曽呂利新左衛門(そろり しんざえもん)という話し上手な家来がいました。あるとき秀吉が、ほうびに何がほしいかとたずねます。

新左衛門はこう答えました。

新左衛門のお願い
今日は米を1粒、明日は2粒、あさっては4粒。そうやって毎日、前の日の倍の米をください。それを1か月。

秀吉は笑って引き受けたといいます。米1粒です。そんな安いほうびでいいのか、と。

予想してみよう:30日目には、何粒もらえる?

塾長 小池

1、2、4、8…。30日目のその日1日ぶんだけで何粒か、予想してから下を見てください。1000粒? 1万粒?

答えを見る
日その日にもらう米ここまでの合計
1日目1粒1粒
2日目2粒3粒
3日目4粒7粒
10日目512粒1023粒
20日目52万4288粒104万8575粒
30日目5億3687万912粒10億7374万1823粒

30日目は1日だけで5億粒をこえます。10日目までは茶わん1杯にも届かないのに、20日目をすぎると手がつけられなくなる。

30日で、米俵350俵以上

米蔵の中で、豊臣秀吉が天井までつみ上がった米俵の山を見上げて、目を丸くして口をあんぐり開けている。「気づいたら 米俵の山!」の文字。

30日ぶんの合計は、およそ10億7000万粒。

米1粒はだいたい0.02g です。かけ算すると、

10億7374万1823粒 × 0.02g
およそ2万1500kg = 21.5t
10kgの米袋なら2100袋以上。江戸時代の米俵(1俵60kg)なら約358俵

小さな村が1年に納める年貢に届く量です。秀吉は途中で気づいて、別のほうびに変えてもらったと伝わっています。

塾長 小池

もし「毎日1粒ずつ増やす」約束だったら、30日の合計はたった465粒。茶わん半分にもなりません。「1粒ずつ足す」と「倍にする」のちがいが、そのまま21.5tの差になります。

将棋盤のマスを全部うめたら?

この話は、将棋盤のマスに米を置いていく形で語られることもあります。数検のページの絵は、その形にしてあります。

将棋盤のマスは81。1マス目に1粒、次のマスはその倍、とやっていくと、81マス目までの合計はおよそ2.4×1024粒。1兆の1兆倍の、さらに2.4倍です。

重さにすると、およそ4.8京(けい)トン。世界中でとれる米は1年で5億トンほどなので、世界の米を1億年ぶん集めても、やっと足りるかどうか。盤の上には、どうやっても置けません。

やってみよう:紙を何回折れる?

放課後の教室で、男子中学生が大きな紙を半分に折ろうとし、その横で豊臣秀吉が身をのり出してワクワクしながら見守っている。「紙は何回 折れる?」の文字。

最初に用意してもらった紙の出番です。倍々は、米でなくても起こります。

  1. 紙を半分に折る。もう一度半分に折る。何回折れるか数える
  2. 折るたびに、紙の厚さは2倍になっている

たぶん7回か8回で、もう折れなくなったはずです。

もし、42回折れたら
紙1枚の厚さを0.1mmとすると、42回折ったときの厚さは
0.1mm × 242 = およそ44万km
地球から月までは約38万km。月を通りこします。

塾長 小池

実際には8回くらいで折れなくなります。折れないことと、計算が正しいことは別の話です。

この増え方には、名前がある

1、2、4、8、16…のように、同じ数をかけて増えていく数の並びを等比数列といいます。高校の数学で習います。

名前は今覚えなくていいです。ただ、「倍を重ねると、途中から急に大きくなる」という感覚は、今のうちに持っておくと得をします。細胞が分かれて増えるのも、うわさが広まるのも、借金の利子がふくらむのも、同じ形です。

もっと深く:コテンラジオで聞く

夕方、車の後部座席で館山中の制服を着た中学生がイヤホンで歴史のポッドキャストを聞き、頭の上に鎧の武士や着物の女性、城の場面が浮かんで、目を輝かせている挿絵

コテンラジオ(COTEN RADIO)は、歴史が大好きな深井龍之介ふかいりゅうのすけさん・ヤンヤンさんと、歴史が苦手な樋口さんの3人が、1人の人物を何回にも分けてじっくり語る歴史のポッドキャストです。教科書では1行で終わる出来事の裏にある、人間くさい話が聞けます。

この記事の人物には「秀吉・家康編」(全12回)があります。秀吉が主役なのは1〜7回目で、8回目からは関ヶ原の戦いと家康の話に移ります。この記事の「数をにぎった秀吉」につながるのは、3回目「秀吉の兵站へいたん力」。兵站は、戦う兵の食料や物資をそろえて運ぶ力のことです。本能寺の変は4回目、天下統一のあとの国づくりは6回目で聞けます。身分の低いところから天下人になった秀吉が、なぜ最後に朝鮮へ兵を出したのか(7回目)。出世の話だけで終わらないところが、このシリーズの聞きどころです。

まずは1回目だけ聞いてみてください。おもしろければ、次の回が勝手に聞きたくなります。

聞くなら Voicy(アプリでもブラウザでも聞けます)がおすすめです。YouTube のように次のおすすめ動画が画面に出てこないので、気が散らずに話だけを追えます。ほかのアプリで聞くなら、Apple Podcasts/Spotifyでも聞けます。

音だけなので、通学の車の中や、寝る前の時間にそのまま聞けます。画面を見なくていいのが、ラジオのいいところです。

秀吉は、数をにぎった人でもある

田んぼのあぜ道で、豊臣秀吉が桝を手に、まわりで縄と竿で田んぼを測る人たちを背に、得意げに胸を張っている。「田んぼを 全部測り直す」の文字。

米粒の話では一本取られた秀吉ですが、数に弱かったわけではありません。天下を取ったあと、秀吉は太閤検地を行いました。全国の田畑を同じものさし・同じ枡(ます)で測り直して、どこで米が何石とれるかを数字にしたのです。

だれがどれだけ年貢を納めるかが、数で決まるようになりました。数をつかんだ人が、国をつかむ。数検で試されるのも、結局は同じ力です。

ひとこと
もとの話では、お願いしたのは秀吉ではなく曽呂利新左衛門です。「秀吉が信長にお願いした」という形で語られることもありますが、それは後からの脚色です。

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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