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漢字の勉強は「覚えるだけの単純作業」だと思われています。テストで20点分。覚えれば取れるし、覚えなければ落とす。その程度のもの、と。
でも、僕の考えは違います。漢字は、思考力そのものを支える道具です。漢字が強い子は、国語だけでなく勉強全体が伸びていく。逆に漢字が弱い子は、どの教科でも理解に時間がかかる。塾で生徒たちを見てきて、これは確信に変わりました。
なぜ漢字がそこまで重要なのか。キーワードは「圧縮」です。この記事の前半で漢字がなぜ重要かを、後半で当塾が実践している漢字の勉強法を解説します。
こんな文を見てください。
「自分で考えて、人に言われなくても自分から積極的に活動していくこと」
32文字。長いです。これを漢字の熟語で言い換えると——
「主体性」
たった3文字。32文字ぶんの内容が、3文字に圧縮されました。この圧縮こそが、漢字を知っていることの本当の価値です。
人間が一度に頭の中に置いておける情報の量は、実はとても少ないです。頭の中に小さな作業机が1つある、とイメージしてください。
「自分で考えて、人に言われなくても自分から積極的に……」と32文字のまま考えていたら、それだけで机がいっぱいになります。その先を考えるスペースが残りません。
でも「主体性」と3文字に圧縮できれば、机の上には広いスペースが空きます。空いたところで、
と、考えを次へ次へと進めていけます。
語彙は、思考の部品です。部品が小さくコンパクトなほど、大きくて複雑なものを組み立てられます。漢字を知っている子ほど深く考えられるのは、この仕組みがあるからです。
ひらがなは「音」を記述する文字です。一方、漢字は「意味」を記述する文字。ひらがなだけの文章と漢字混じりの文章を比較すると、脳の負荷が明確に異なります。
| 表記 | 処理のプロセス | 脳の動き |
|---|---|---|
| ひらがな | 音を順番に拾う → 脳内で単語として再構成 → 意味を理解 | 直列的(逐次処理) |
| 漢字 | 形態(パターン)を認識 → 意味を即座に引き出す | 並列的(直感的認識) |
例えば、「ていきてきなてんけん」というひらがなの羅列を見たとき、脳はまず「て・い・き・て・き・な」という音の連なりを処理してから、「定期的」という概念に変換します。
しかし、「定期的な点検」という漢字であれば、網膜に映った瞬間に「間隔をおいて確認する」という概念が脳に飛び込んできます。
この「音の解読を飛ばす」速度が、読書スピードや思考の回転数に直結します。
文章を読むときも、頭の中では同じことが起きています。
語彙が豊富な子は、「懸念」「矛盾」「抽象」という言葉が出てきても、一瞬で意味に変換して先へ読み進めます。頭の作業机は「この文章は結局、何を言いたいのか?」という内容そのものに使えます。
語彙が少ない子は、言葉の意味を推測するだけで机がいっぱいになります。1行読むごとに立ち止まり、文章全体の意味を考えるところまでたどり着けない。読み終わっても「何が書いてあったか分からない」となります。
読解力の差の正体は、かなりの部分が語彙力の差です。だから当塾では、読解の指導と同じくらい、漢字・語彙の勉強を重視しています。
考えを表現するときも同じです。
圧縮された言葉を持っている子は、作文でも「部活動を通じて主体性が身についた」と一文で書けます。持っていない子は、同じ内容を説明するのに3行かかる。字数制限のある入試の作文や記述問題では、この差が決定的になります。
そもそも人間は、言葉で考える生き物です。語彙がある人ほど考える材料が多く、考えが深くなります。
僕が大学の言語学の授業で今でも覚えている話があります。語彙によって、人間は見えている世界そのものが変わるという話です。比喩ではなく、本当に見え方が変わる。
雪の世界に暮らすエスキモーは、いつも一面の雪の中で生きています。日本人の僕らには白一色にしか見えない。でもエスキモーには、白が何色にも見え分けられている。白を表す語彙が豊富にあるから、微妙な違いを区別して見えるのだそうです。
言葉が、目の見え方まで変えてしまう。語彙とはそれほど強力なものです。


ベネッセが行った3000人を対象にした大規模な調査。辞書でしかお目にかかれないレアな単語270語と、新聞で頻繁に出くわす270語の合計540語をどれだけ知っているかの調査です。グラフのとおりでたくさんの語彙を持っている人ほど年収が高いことがわかります。
わかりやすいメリットも押さえておきます。国語のテストには漢字が必ず20点分あります。漢字を仕上げるだけで、国語の点数は安定します。読解でも語彙力は重要なので、読解の点数も漢字の勉強によって上がります。
さらに、教科書も、テストの問題文も、先生の説明も、すべて日本語です。数学の文章題も、理科も社会も、語彙力がなければ問題の意味からつまずきます。漢字・語彙は、全教科の土台です。


「綿密」これだと読めない子がいたんですけど、「綿」はなんてよむ?と問いかけると「めん」と読める。じゃあ、「密」は?と問いかけると、「みつ」と答えられました。じゃあくっつけると?「めんみつ」分けて考えれば読めます。
熟語は音読み+音読みの漢字が多いので、漢字を分けて、それぞれを音読みで読んでみるクセをつけたいです。


精 清 晴
この文字の音読みは何でしょうか?全部「セイ」です。青という漢字は音読みではセイと読みます(例. 青春:セイシュン)このように知っている漢字と同じ読み方になります(音読みの場合は)。


部首が意味を表し(意符といいます)、その他の部分が音を表します(音符といいます)。今回(精 清 晴)でいうと、青が音を表しているので、セイという読み方になります。知っている漢字と同じ読み方ではないかと推測してみましょう。
わからないことに直面した時、諦めずに推測することが大切です。「精」を見て「セイ」と推測するように、知識がなくても推測できる場面は多いです。「ならってません」と言って答えを放棄することは学びを止めてしまいます。たとえ難しい問題でも、推測を通じて学びが印象に残り、記憶に定着します。
漢字は書きよりもまず読みから勉強していきます。読みのほうが勉強しやすいですし、読解などでも重要なのは実は読みの方です。
漢字の勉強をするというと何回も描きだそうとする人が多いですが、そうではなく、まずテストを一発やってください。特に読みは何度も書くというよりも、隠して読みを頭で浮かべて丸バツを付けていくような勉強がスピードが速いです。
漢字の書きは多少は書いても良いと思いますが、それでも3回程度。一回書く時に集中して観察をして、どういう構成になっているかを良く見るのです。そして自分なりに覚え方を開発することが重要。
一度テストをするとできる漢字と、できない漢字に仕分けができます。間をあけて、もう一度✕の問題だけを解き直すのです。
漢字は漢字そのものができて点数を取るためというよりは語彙力を増やすというのが本当の目的です。だから漢字の意味を分からずに、漢字の点数だけを高めようとしても、あまり意味がありません。

「こうかい」(あとになって、過去のことをくやむこと)と書きたいとき、どんな「かい」を選びますか?
漢字が苦手な子は、おもしろいこうかいをかきます。後になってくやむこと。だから後「悔」です。
わかもの(わかいひとのこと)と書く問題で「若物」と書く子が数名いました。
物(モノ)じゃない^^;人だから者(モノ)
漢字は一文字一文字に意味があります。その意味をとらえていくことが大事です。

ほとんどの漢字ドリルに、漢字の意味ってのっています。でも、漢字が苦手なこは、ここを読んでいない。意味を無視している…。読まないと区別できないですよ。

「怪」「悔」は音読みだと「カイ」。意味がわかりません。でも、訓読みなら「怪しい」「悔いる」なので、意味がわかります。音読みで意味がわからなければ、訓読みを思い浮かべましょう。
「怪」という字から、思いつく言葉はありますか?
など思いつく人がいるかもしれません。では共通する意味はなんでしょうか?
「こわい」「ふつうじゃない」そんなところじゃないですか?だから、「こうかい(後になってくやむ)」
という意味と「怪(かい)」はあわないですよね。音だけで飛びつくんじゃなくて、意味を考えて漢字をあてはめるといいですよ。


例えば、この部首。どういう意味があるでしょう?

心という漢字が変化してできたものです。(「りっしんべん」と呼びます)
先ほどでてきた、「悔」「怪」という漢字。両方とも、「りっしんべん」です。ということは、心に関する意味があるのかな?と考えられます。
両方とも感情(心)に関することですよね。
他にも例をあげてみましょう。

この部首はどういう意味かわかりますか?座ってくつろぐ人が変形した文字。「おおざと(大里)」といいます。
だから、「おおざと(大里)」の漢字は、
という意味になります。
など。確かに人が集まる場所ですよね。

こざとへん。元々の意味は、小高い山をさします。岐阜(ぎふ)の「阜」を略した字。
と、「こざとへん」のもつ小高い山という意味と結びつけるとおぼえやすいと思います。
例えば麓。よく見ると2つの漢字からできている。林+鹿。たぶん、こんな感じ↓

山の
麓
林があって、鹿がいた。
他にも餌。「エサ」という字。これもよく見ると、「食」「耳」。耳を食べる?たぶんこんな感じ↓

パンの耳をエサとして与えている様子。正確な由来でなくてもいいでしょう。自分なりに考えるから楽しいです。
漢字ができない子・・・というよりは語彙力が低い子を見ると、大変失礼ながら勉強が得意でないケースが多いです。
語彙力の豊富さは、理解力に大きな影響を与えるので、親御さんは以下を意識するのが良いと思います。
子どもを読書好きに育てていきましょう。



とある調査で42の家庭を家庭の職業、両親の学歴、世帯年収などによって4つのグループに分類しました。もっとも社会的階層の高いレベルは専門職についている家庭と定義され、最も低いのは生活保護世帯と定義されていました。
専門職に就いている家庭では、1時間に平均2000語を超える発話が行われ、3歳の終わりまでに子どもが聞いた言葉の数は4500万語に上りました。結果として、3歳時点の子どもの獲得語彙数は1116語まで上がっています。
一方、生活保護世帯では1時間で600語と1/3ほどしか話しておらず、3歳までに聞く言葉の総数も1300万語。当然、獲得する語彙の数も少なく525語になりました。
親の発話数が子どもの語彙力に影響を与えているという研究結果です。子どもの語彙力が少なければ、普段の会話でもわからないことだらけ。小学校の授業でもわからないことだらけでしょう。いちいち、言葉がわからないせいで説明を理解できなくなります。
カタカナーシ、ボブジテンなどコミュニケーション系のゲームで遊ぶことです。もちろん、しりとり、マジカルバナナなどでも大丈夫。車の中や、暇なときにやりやすいです。
座学でやるなら、意味を考えながらやる漢字の勉強や、語彙を増やすドリルもおすすめ。※語彙を増やすドリルは小学生のクラスでやっています。
学校の漢字ワークはまずまずの量がありますので、これをしっかり仕上げましょう。ほとんどのお子さんは、やって終わりになっているだけで、できるようになっていないです。学校でテストをする仕組みがないようであれば、ご家庭でテストをしてあげるといいです。
漢字検定を積極的に受けましょう。中1で漢検4級、中2〜3で漢検3級を取りたいところ。漢検3級ならばほぼ高校入試レベルなので高校入試の国語にも直接的にプラスになります。また安房高校では、漢検3級は内申書で加点要素と明言されています。他の高校でも、漢検3級を内申書にのせることができます。
当塾は漢検の準会場です。2026年8月20日(木)に当塾で漢字検定を実施します(塾外生の受検もOK)。申し込みは下のボタンからどうぞ。


小学生の国語講座では語彙力を鍛えるドリルを毎回10〜15分行います。


例えば、横行という言葉はなかなか小学生との会話で、親御さんは使わないかと思います。プリントを使って、活字を読むことで知識として得ていくのはいいかと思います。


気をつけているポイントは、漢字の意味を理解すること、補足解説をしっかりと付けることです。こちらは当塾独自のオリジナルのプリントですが、






こんな感じで、言葉のイメージ・由来をしっかりと捉えられるように作っています。


とにかく乱暴に書きまくって覚えるのではなく、イメージを持ったり、意味を理解しながら勉強したい。一番右の解説がわかりやすく、覚えやすいプリントを作っています。
中1向け、中2向け、中3向けなどの学年ごとの頻出漢字に加えて、漢検4級対策、3級対策と漢検に合わせたプリントもあります。


四字熟語は、千葉県高校入試で必ず1題でることと、漢検に出題されることから逃れられません。市販の参考書だと意味が書いていないケースがあり、意味を付け足して解説します。
かなり手間をかけて作っています。その結果、生徒たちは、勉強って丸暗記じゃなくて、意味を考えたり、由来を調べたりするんだと勉強のスタンスが構築されていきます。(当塾の教材は、意味・由来・覚え方は解説に加えています)
漢字の勉強を「作業」で終わらせないでください。意味を考え、言葉を増やし、考える力そのものを育てる。当塾では小学生から、そういう漢字・語彙の勉強を積み重ねています。後伸びする学びを!