なんでも知りたい「歩く百科事典」。南方熊楠と、つながる学び

南方熊楠が、植物・天体・地図・辞書などの本と標本に囲まれた書斎で、両手を広げている

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

まなぶ君の実力テストのページで、本と標本に囲まれて両手を広げている人。南方熊楠(みなかた くまぐす)です。

植物、きのこ、粘菌、昆虫、天文、民俗学、いくつもの外国語。あまりに何でも知っているので、「歩く百科事典」と呼ばれました。

目次

子どものころ、百科事典を書き写した

古い座敷で、南方熊楠が山のように積んだ分厚い本のあいだで、頬にすみをつけて夢中で筆を走らせている。「全巻 写しきる」の文字。

熊楠は1867年、和歌山に生まれました。

子どものころ、近所の家に『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』という本がありました。江戸時代の百科事典で、全部で105巻。動物も植物も、天文も地理も、なんでも絵つきで載っています。

熊楠はこの本を借りて読み、家に帰ってから覚えた内容を書き写しました。何年もかけて、ついに全巻を写しきったといいます。

塾長 小池

コピー機もスマホもない時代です。写しながら、全部の分野が頭の中に入っていったんだと思います。

大学をやめて、アメリカとイギリスへ

大きな図書室で、南方熊楠が積み上げた本の山を前に両手を上げて大よろこびしている。まわりの洋服の人たちが少しおどろいて見ている。「本の山で、 大よろこび」の文字。

東京の大学予備門(今の東京大学の入り口にあたる学校)に入ります。同じころの同級生には、夏目漱石や正岡子規がいました。

ところが熊楠は、授業より自分の興味を追いかけて、学校をやめてしまいます。そして19歳でアメリカへ。森や山を歩いて植物やきのこを集めました。

そのあとイギリスへわたり、ロンドンの大英博物館で本を読みあさります。イギリスの科学雑誌『ネイチャー』には、生涯で50本をこえる文章がのりました。

粘菌と、キャラメルの箱

しめった森の中で、南方熊楠が倒れた木にはう黄色い粘菌を虫めがねでのぞき、目をキラキラさせている。「動物? 植物?」の文字。

熊楠がいちばん夢中になったのは、粘菌(変形菌)という生き物です。ふだんはアメーバのように動いて食べ物を探し、時期が来るときのこのように胞子をつくる。動物とも植物ともいえない、ふしぎな生き物です。

1929年、熊楠は和歌山を訪れた昭和天皇に、粘菌について説明する役をまかされます。

予想してみよう:天皇にさし上げた標本は、何に入っていた?

塾長 小池

ふつうなら、りっぱな桐の箱に入れるところです。

答えを見る

答えは、キャラメルの空き箱。熊楠は、粘菌の標本をキャラメルの箱に入れてさし上げたといわれています。見た目より、中身。いかにも熊楠らしい話です。

森を守った、はじめての人のひとり

明治の終わり、国は小さな神社をまとめて減らす方針(神社合祀)を進めました。神社がなくなると、そのまわりの森も切られてしまいます。

熊楠はこれに強く反対しました。森を切れば、そこにすむ粘菌も植物も虫も、村の人の暮らしや祭りも、全部いっしょに消えてしまうからです。

生き物と、土地と、人の暮らしは、ぜんぶつながっている。熊楠は、今でいう「生態系(エコロジー)」の考えを、早くから言葉にした一人でした。

塾長 小池

植物を知っていたから森が守れた。民俗を知っていたから、祭りの大切さも言えた。学んだことが、ここで全部つながっています。

やってみよう:1つの言葉から、教科をまたぐ

学校の図書室で、男子中学生が大きな紙の真ん中の米の絵から線を何本も引き、その横で南方熊楠が両手を広げてニコニコしている。「米から 線を引こう」の文字。

熊楠のまねをして、1つの言葉からほかの教科へ線を引いてみましょう。

言葉理科社会ほかには?
米イネの光合成・種子稲作の伝来(弥生時代)・米どころ?
川流れる水のはたらき(しん食・運ばん・たい積)扇状地・三角州?
  1. 表の「?」に、国語・英語・数学でつながる言葉を入れてみる(例:米→英語で rice、数学で「収穫量のグラフ」)
  2. 自分で1つ言葉を選んで、同じ表を作ってみる

もっと深く:コテンラジオで聞く

夕方、車の後部座席で館山中の制服を着た中学生がイヤホンで歴史のポッドキャストを聞き、頭の上に鎧の武士や着物の女性、城の場面が浮かんで、目を輝かせている挿絵

コテンラジオ(COTEN RADIO)は、歴史が大好きな深井龍之介ふかいりゅうのすけさん・ヤンヤンさんと、歴史が苦手な樋口さんの3人が、1人の人物を何回にも分けてじっくり語る歴史のポッドキャストです。教科書では1行で終わる出来事の裏にある、人間くさい話が聞けます。

南方熊楠のシリーズは、コテンラジオにはまだありません。代わりに「科学技術の歴史編」(全12回)を勧めます。1〜3回目は、昔の人が想像で考えた宇宙から、実験で確かめる「科学」が生まれるまでの話。標本を集めて、自分の目で確かめ続けた熊楠のやり方の土台です。そこから金属、蒸気機関、火薬、農業、原子力、コンピュータ、AIへと、理科と社会をまたいで1本につながっていきます。この記事の「1つの言葉から教科をまたぐ」を、そのまま耳で体験できるシリーズです。

まずは1回目だけ聞いてみてください。おもしろければ、次の回が勝手に聞きたくなります。

聞くなら Voicy(アプリでもブラウザでも聞けます)がおすすめです。YouTube のように次のおすすめ動画が画面に出てこないので、気が散らずに話だけを追えます。ほかのアプリで聞くなら、Apple Podcasts/Spotifyでも聞けます。

音だけなので、通学の車の中や、寝る前の時間にそのまま聞けます。画面を見なくていいのが、ラジオのいいところです。

実力テストは、全部から出る

実力テストは、定期テストとちがって、これまでに習った全部の範囲から出ます。だから「どこを勉強すればいいかわからない」と感じる人が多い。

でも熊楠を見ると、ヒントがあります。ばらばらに覚えたことも、つながると忘れにくくなる。理科で習った川のはたらきが、社会の扇状地の問題でそのまま使える。

学んだことは、全部つながる。実力テストは、そのつながりを試されるテストです。

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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