天野・本田研究室(名古屋大学):青色LEDでノーベル賞、今は電気をむだなく使う半導体を作る研究室

半導体の研究室で、ピンセットでつまんだ小さなチップが青く光り、その光に照らされて目を輝かせる茶髪の眼鏡の男子大学院生。「ノーベル賞の名古屋大学」「青色LEDから省エネ半導体へ」「電気のむだを減らす」の文字。

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

みなさんの家の電気、学校の教室の明かり、スマホの画面。どれにもLEDが使われています。LEDで白く明るい光が作れるようになったのは、青く光るLEDができたからです。赤や緑のLEDは1960年代にできていましたが、青だけは「20世紀のうちには無理」と言われていました。

その青色LEDを作り出したのが、名古屋大学の天野浩ひろしさんと、先生の赤﨑勇いさむさんです。2人は2014年にノーベル物理学賞を受けました。天野さんが学生のころから研究を続けてきた研究室は、いまは「天野・本田研究室」として、本田善央よしお教授が率いています。

出典:名古屋大学 青色LED基金「GaN研究の歴史とこれから」、科学技術振興機構(JST)サイエンスポータル(2014年10月7日)

目次

ひとことで言うと、何の研究?

夜の自分の部屋で、白いLEDのスタンドの光の下、小さな充電器を指でつまんで楽しそうに眺める館山中の女子。「青い光と省エネの半導体」の文字。

天野・本田研究室の研究をひとことで言うと、青く光るLEDを作り出し、今は電気をむだなく使う半導体はんどうたいを作っている研究室です。

半導体は、電気を通したり止めたりできる材料です。スマホやパソコンの中身は、ほとんどがシリコンという半導体でできています。この研究室が使うのは、シリコンではなく窒化ちっかガリウム(GaN)という材料です。窒化ガリウムは、青い光を出せるだけでなく、高い電圧をかけてもこわれにくい性質を持っています。

研究室のテーマを中学生向けに言い換えると、こうなります。

研究の名前中学生向けに言うと
窒化物半導体の結晶けっしょう成長原子をきれいに並べて、LEDやトランジスタの材料を作る
白色・紫外・緑色の発光ダイオード白・緑・目に見えない紫外線の光を出すLEDを作る
レーザダイオード医療や立体ディスプレイに使う、細く強い光を出す部品を作る
GaNパワーデバイス電気自動車や家電の電気を、むだなく変える部品を作る
太陽電池光から電気を作る部品を作る

出典:名古屋大学工学研究科電子工学専攻 天野・本田研究室「研究内容」(semicond.nuee.nagoya-u.ac.jp)。中学生向けの言い方は小池が言い換えた

青く光るLEDができるまで

古い大学の実験室で、白く曇った小さな結晶の板をピンセットで持ち上げ、眉を下げてため息をつく黒髪の男子大学院生。「何度も失敗して青い光へ」の文字。

天野さんは1960年に静岡県で生まれ、名古屋大学の工学部電子工学科に進みました。1982年、4年生で赤﨑先生の研究室に入ります。そこから44年間、窒化ガリウムの仲間(窒化物半導体)の研究を続けることになります。

当時、青色LEDは材料が作れないため無理だと考えられ、多くの研究者があきらめていました。窒化ガリウムの結晶を土台の板(サファイア)の上に育てようとしても、原子の並びの間かくが合わず、きれいな結晶にならなかったからです。

出典:名古屋大学 未来材料・システム研究所「定年退職あいさつ ありがたき研究生活」(天野浩、2026年2月26日)、名古屋大学 研究者情報「天野 浩」、名古屋大学 青色LED基金「GaN研究の歴史とこれから」、名城大学 プレスリリース(2026年4月1日)

2人は、土台と結晶のあいだに、低い温度で薄い層(低温バッファー層)をはさむ方法を考えました。1985年、これで質の高い窒化ガリウムの結晶ができました。

もう1つの壁が「p型」です。LEDは、電子が多い「n型」と、電子の入る穴が多い「p型」の2種類の半導体を貼り合わせて光らせます。窒化ガリウムは、p型がどうしても作れませんでした。天野さんは、マグネシウムを入れた結晶に電子のビームを当てると性質が変わることを見つけ、1989年にp型の窒化ガリウムを作ることに成功しました。 これで、青く光るLEDの道が開けました。

出典:名古屋大学 プレスリリース「『青色LED』がIEEE Milestoneに認定」(2025年10月1日)、名城大学「ノーベルレクチャー講演概要『青色光に魅せられて』」

スーツにメガネの天野浩さんが、EPFLと書かれた白い演台の前で、手ぶりをまじえて話している
青色LEDと深い紫外線のLEDについて講演する天野浩さん(スイス連邦工科大学ローザンヌ校・2019年)
写真:Alain Herzog/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

天野さん本人が、この2つの発明を、実験の装置を見せながら説明する動画です(2分)。名古屋大学の研究センターの公式チャンネルの「青色LED ものつくりの系譜」の第3回です。

動画:名古屋大学 未来エレクトロニクス集積研究センター CIRFE(YouTube 公式チャンネル)

塾長 小池

結晶が1回でうまくできたわけではありません。うまくいかない実験を何度もくり返し、ずれた理由を考え直す。研究の毎日は、テストの直しとよく似ています。

動画で見る

「青色LED ものつくりの系譜」は全4回のシリーズで、天野さんが名古屋大学の実験施設と赤﨑記念研究館の装置を見せながら、青色LEDの作り方を説明します。第1回(2分)は、窒化ガリウムの研究のために作られた実験施設「C-TEFs」の紹介です。

第4回(2分)は、天野さんの先生、赤﨑勇さんの回です。青色LEDは、先生と教え子の2人で作り上げたものです。

動画:名古屋大学 未来エレクトロニクス集積研究センター CIRFE(YouTube 公式チャンネル、2020年)

ノーベル賞が決まった3日後、2014年10月10日に、天野さんと赤﨑先生が名古屋大学でそろって記者会見をしたときの映像です(3分)。大学時代の先生と教え子が、並んで笑顔で話します。

動画:共同通信 KYODO NEWS(YouTube 公式チャンネル)

研究室から生まれたもの

夕暮れの駅前の通りで、白いLEDの街灯と信号がいっせいに灯るのを見上げ、満面の笑顔になる茶髪の女子大学生。「白い明かりも信号も」の文字。

青色LEDを最初に製品にしたのは、愛知県の会社、豊田合成です。国の研究機関(JST)が1987年から開発を任せ、1995年に製品になりました。JSTに入った特許の使用料は、2013年の時点で約56億円にのぼります。

出典:科学技術振興機構(JST)「青色発光ダイオードを実用化」

青色LEDに、光の色を変える材料(蛍光体けいこうたい)を組み合わせると、白い光になります。こうしてできた白色LEDが、家や街の明かりを置きかえました。白色LEDが広がると、日本で作る電気の約7%を減らせると考えられています。青色LEDは、街の信号機にも使われています。

建物の前に下がった歩行者用の信号。赤い人の形が細かい光の粒で光り、横に「試験中」の札がある
名古屋市の街で試されていたLEDの歩行者用信号(2006年)。信号の明かりは、細かいLEDの粒でできている
写真:RadioActive~commonswiki/CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

出典:名古屋大学 青色LED基金「GaN研究の歴史とこれから」

そして今、研究室がいちばん力を入れているのが、電気をむだなく使うための半導体(パワー半導体)です。電気自動車は、電池の電気をモーターが使える形に変えながら走ります。シリコンの部品だと、この変えるときに電気の約5%が熱になって逃げていきます。窒化ガリウムなら、これを0.75%まで減らせると考えられています。

出典:名古屋大学 青色LED基金「GaN研究の歴史とこれから」

窒化ガリウムは、すでに身近なところで使われ始めています。スマホの充電器です。同じ30ワットの充電器でも、窒化ガリウムを使うと、ずっと小さく作れます。

白い充電器が2つ並んでいる。左は大きな四角い充電器、右はその半分ほどの小さな充電器
同じ30ワットのスマホの充電器。左がシリコンを使ったもの、右が窒化ガリウム(GaN)を使ったもの(2025年)
写真:4300streetcar/CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

2019年、研究室のグループは、窒化ガリウムの部品で電気自動車を動かすことに、世界で初めて成功しました。 電気のむだを、今までの技術より20%以上減らせると期待されています。この車「All GaNビークル」は、2019年の東京モーターショーで展示されました。

出典:名古屋大学 プレスリリース「世界初!窒化ガリウムでEV車の駆動に成功」(2019年10月24日)

その車が、実際に走るところを公開した日のニュースの動画です(1分)。

動画:中日新聞(YouTube 公式チャンネル、2020年12月)

どんな人が研究しているか

清潔な半導体の実験室で、大きなステンレスの装置の計器をにらむように見つめ、口を固く結んでつまみを回す短髪の男子大学院生。「結晶を育てる毎日」の文字。

天野さんは、2026年3月に名古屋大学を定年ていねんで退職しました。今も名古屋大学の未来材料・システム研究所の特任とくにん教授として研究を続け、研究室のメンバー表にも「特別教授」として名前があります。2026年4月からは、赤﨑先生と一緒に長く過ごした名城大学の学術アドバイザーも務めています。

研究室を今率いているのは、本田善央教授です。名古屋大学で博士(工学)を取り、2024年4月に教授になりました。

  • 本田 善央 教授:窒化ガリウムの結晶と、それを使った部品の研究
  • 天野 浩 特別教授
  • 准教授2人(出来 真斗 准教授、久志本 真希 准教授)
  • 特任教授・特任准教授・助教・特任助教が6人

出典:天野・本田研究室「研究室メンバー」(2026年6月12日更新)「新着情報」、名古屋大学 研究者情報「天野 浩」(2026年7月27日更新)、名城大学 プレスリリース(2026年4月1日)、researchmap「本田 善央」

先生の1人、久志本真希准教授は、2022年に文部科学大臣表彰の若手科学者賞を受けました。研究室の新着情報には、学生や若い先生の受賞の知らせが毎年並びます。

学生は、博士課程6人、修士課程16人、学部の4年生7人です。研究員も7人います。メンバー表には、海外から来た学生や研究員の名前も並びます。

出典:天野・本田研究室「研究室メンバー」(人数は2026年10月11日にメンバー一覧を数えたもの)「新着情報」(2022年4月11日)。研究室の卒業生だけの進路は公式に出ていないので書いていない

研究室が使う実験施設を、窒化ガリウムのトランジスタを作るところから、電気自動車に積んで試すところまで案内する動画です(21分)。少し長いですが、研究室が使う施設の中までよく見えます。

動画:名古屋大学 未来エレクトロニクス集積研究センター CIRFE(YouTube 公式チャンネル、2020年12月)

この研究室に入るには

大学の工学部の廊下で、研究室の案内のポスターが並ぶ掲示板の前に立ち、あごに指を当てて楽しそうに迷う茶髪の男子大学生。「4年生で研究室を選ぶ」の文字。

道は2つあります。

道流れ
名古屋大学に入る(学部から)名古屋大学 工学部 電気電子情報工学科に入る → 1〜2年で基礎、3年で専門と実験 → 4年生で研究室を選ぶ
ほかの大学から入る(大学院から)ほかの大学の理系の学部を卒業する → 名古屋大学大学院 工学研究科 電子工学専攻の修士課程の入試に受かる

出典:名古屋大学工学部「電気電子情報工学科」、名古屋大学 電気電子情報工学科「学部」「大学院受験生の方へ」

電気電子情報工学科では、4年生になるときに、希望する研究室を選びます。卒業生の約90%が大学院に進みます。

大学院の入試には、筆記試験が免除になる道と、筆記試験と面接を受ける道があります。英語は、TOEFLかTOEICの点数を出します。出願のときに、入りたい研究室の希望を書いて出します。入試の説明会では、研究室の見学もできます(2026年は3月9日)。

研究室は、大学院からもう一度選び直せます。 ほかの大学で学部を卒業してから、修士の入試を受けてこの研究室に入る道もあります。

理系の学部の選び方は理学部・工学部・情報学部ってどんな学部?にまとめました。

中高生のうちにできること

放課後の学校の図書室で、電気の回路の問題を前に、鉛筆を握ったまま眉を寄せて困った顔でノートを見つめる館山中の男子。「理科の電気から逃げない」の文字。

名古屋大学の東山キャンパスにある赤﨑記念研究館は、1階の展示室を見学できます。青色LEDを使った信号機や、赤﨑先生の研究の資料が並んでいます。

場所見られるものいつ
赤﨑記念研究館(名古屋大学 東山キャンパス)青色LEDの研究の展示10時〜16時。日曜・月曜・祝日は休み
あいち・なごやノーベル賞受賞者記念室(名古屋市科学館 生命館 地下2階)愛知にゆかりのあるノーベル賞受賞者の展示2021年3月23日に開設
名古屋大学オープンキャンパス(工学部)学科の紹介・模擬授業2026年は8月6日(申し込みと抽選。受付は終わった)。2027年の案内は名古屋大学の公式サイトで

出典:名古屋大学「名古屋大学概要」公開施設等(2025年)、名古屋市観光情報「名古屋大学赤﨑記念研究館」、愛知県「あいち・なごやノーベル賞受賞者記念室」、名古屋大学「OPEN CAMPUS 2026」。開館日は大学の行事で変わることがあるので、行く前に確かめること

半導体の研究には、理科と数学がいります。原子がどう並ぶかは中学の理科の「原子と分子」、電気の流れは中2の「電流」、光と電気のエネルギーの計算は高校の物理です。結晶の並びを考えるには、図形と三角比も使います。論文はほとんどが英語です。中学生のうちは、理科の電気と、数学の図形から逃げないこと。 これがいちばんこの研究室に近づく勉強です。

まとめ

大学の展示室で、青く光るLEDの大きな画面とガラスケースの実験装置を見上げ、目を輝かせて静かにほほえむ学ランの男子高校生。「青い光のその先へ」の文字。
  • 天野・本田研究室は、名古屋大学で青く光るLEDを作り出し、今は電気をむだなく使う半導体を作っている研究室
  • 天野浩さんは、1985年にきれいな結晶、1989年にp型の窒化ガリウムを作り、青色LEDへの道を開いた。2014年にノーベル物理学賞
  • 青色LEDから白色LEDが生まれ、明かりと信号機が変わった
  • 今は窒化ガリウムのパワー半導体で、電気自動車や充電器の電気のむだを減らしている
  • 天野さんは2026年に定年退職し、研究室は本田善央教授が率いる
  • 入る道は、名古屋大学の電気電子情報工学科から、または大学院から。近づく勉強は、理科・数学・英語

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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