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ランゲージ・ラボラトリーの小池です。
まなぶ君の高校入試のページに、海辺で道具をのぞいているおじいさんがいます。伊能忠敬(いのう ただたか)。実際に歩いて測った日本地図を、はじめて作った人です。
しかもこの人、千葉の人です。
今日はこの人の「測り方」の話。読み終わるころには、たぶん自分の一歩を測りたくなっています。


忠敬は1745年、今の千葉県九十九里町に生まれました。17歳で佐原(今の香取市)の伊能家に婿に入り、酒づくりなどの商売を立て直して、村のまとめ役(名主)もつとめます。天明の飢饉のときには、米を配って村の人を助けました。
ここまでで、もう立派な人生です。
ところが忠敬は、49歳で家を息子にゆずると、50歳で江戸へ出ます。何をしに行ったか。天文学を学びにです。
先生は高橋至時(たかはし よしとき)。幕府で暦をつくる天文方で、忠敬より19歳も年下でした。




50歳で、19歳も年下の先生に「弟子にしてください」と頭を下げる。これ、なかなかできません。小池がこの人でいちばん好きなのは、ここです。


当時、北極星の高さ(角度)を測れば、その場所の緯度がわかることは知られていました。
2つの場所の緯度の差と、2つの場所のあいだの距離がわかれば、「緯度1度ぶんは何kmか」が出ます。それを360倍すれば、地球1周の長さです。
足りないのは距離でした。遠くまで測るほど、ずれは小さくなる。だから忠敬は、江戸から蝦夷地(今の北海道)まで測りに行きたかったのです。
では、その距離をどうやって測ったか。最初の道具は、自分の足でした。




答えを読む前に、ちょっと予想してみてください。50cm? 80cm?
答えは、約69cm。忠敬はいつも同じ歩幅で歩けるように練習し、歩いた数から距離を出しました。のちには縄や鉄の鎖、車輪の回った数で距離を数える車も使いますが、出発点は歩数です。
こうして忠敬が出した答えは、緯度1度=28.2里(約110.7km)。いまわかっている値は約111kmです。ほとんど同じ。
先生の至時は、はじめこの数字を信じなかったそうです。のちに西洋の天文学の本の値と照らし合わせて、ぴたりと合っていたことがわかり、2人で喜んだと伝わっています。


忠敬と同じことを、今日やってみましょう。用意するのはメジャー(なければ長いものさし)と、まっすぐ歩ける廊下か道だけです。
たとえば
10歩で6m30cmなら、630cm÷10=63cm。これがキミの一歩です。家から学校まで何歩か数えれば、歩数×63cmで距離が出ます。
忠敬がやったのは、これを日本じゅうでくり返すことでした。


1800年、55歳で蝦夷地へ出発。そこから17年で10回、日本の海岸線や街道を測って歩きました。歩いた道のりはおよそ4万kmといわれます。地球1周(約4万km)とほぼ同じです。
ここで計算してみます。4万kmを、忠敬の一歩69cmで歩いたとすると、
4万km ÷ 69cm
40000000m ÷ 0.69m = およそ5800万歩
1日1万歩なら、5800日。約16年です。




1日1万歩を16年。忠敬が実際にかけたのは17年。計算と、ほとんど同じ数字になります。
忠敬は1818年、73歳で亡くなります。地図はまだ完成していませんでした。
弟子たちは忠敬の死をしばらく伏せて作業を続け、1821年に「大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)」を幕府に納めます。大図214枚・中図8枚・小図3枚。のちに日本へ来たイギリスの測量船の人たちが、その正確さに驚いたと伝わっています。
香取市の佐原には、今も伊能忠敬記念館と、忠敬が暮らした家が残っています。千葉に住む皆さんなら、行ける距離です。


コテンラジオ(COTEN RADIO)は、歴史が大好きな深井龍之介さん・ヤンヤンさんと、歴史が苦手な樋口さんの3人が、1人の人物を何回にも分けてじっくり語る歴史のポッドキャストです。教科書では1行で終わる出来事の裏にある、人間くさい話が聞けます。
伊能忠敬のシリーズは、コテンラジオにはまだありません。代わりに、同じ江戸時代の後半を描いた「ペリー来航編」(全8回のショートシリーズ)を勧めます。忠敬が日本の海岸線を測っていたころ、日本の近くの海には外国の船が姿を見せはじめていました。3回目は、その異国船に幕府がどう向き合ったかの回です。そもそもなぜアメリカは日本に来たのか(2回目)。黒船の話を、来た側のペリーの一生から追いかけるので、教科書とは逆の向きから幕末が見えます。
まずは1回目だけ聞いてみてください。おもしろければ、次の回が勝手に聞きたくなります。
聞くなら Voicy(アプリでもブラウザでも聞けます)がおすすめです。YouTube のように次のおすすめ動画が画面に出てこないので、気が散らずに話だけを追えます。ほかのアプリで聞くなら、Apple Podcasts/Spotifyでも聞けます。
音だけなので、通学の車の中や、寝る前の時間にそのまま聞けます。画面を見なくていいのが、ラジオのいいところです。
日本地図は、一歩ずつの積み重ねでできていました。
高校入試の過去問も同じです。1問ずつ解いて、◯と✕を数える。それで、いまの自分がどこにいるかがわかる。どこにいるかがわかれば、あと何歩かもわかります。
50歳から学び直して、日本を測った人がいる。皆さんは、まだ10代です。
ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて