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ランゲージ・ラボラトリーの小池です。
小惑星から砂を持ち帰った「はやぶさ」。月を走るために作られた、重さ4kgの小さな探査車。学生が手作りした人工衛星。どれにも東北大学の「宇宙ロボット」の研究室がかかわっています。
この流れを作ったのが、2003年から東北大学の教授を務めた吉田和哉先生の研究室です。吉田先生は2026年に大学の研究センターの特任教授になり、名誉教授になりました。いま、大学院の入試で学生を受け入れているのは、吉田先生と15年近く一緒に研究してきた桒原聡文(くわはら としのり)教授の宇宙インフラ工学研究室です。
この記事では、東北大学の宇宙ロボットの歩みと、それを受け継ぐ桒原先生の研究室を紹介します。


宇宙インフラ工学研究室の研究をひとことで言うと、宇宙で人が暮らし、働くための「道路や電気や水道」にあたるしくみを作る研究です。
地上には、道路・電線・水道・ごみ収集があります。これを「インフラ」と呼びます。宇宙で人が長く活動するにも、同じものが要ります。人工衛星に燃料を入れる。こわれた衛星を直す。宇宙のごみを片づける。宇宙で作った物を地球に持ち帰る。研究室は、そのための衛星やロボットを作っています。
研究室が公式サイトに挙げている研究の領域を、中学生向けに言い換えると、こうなります。
| 研究の名前 | 中学生向けに言うと |
|---|---|
| 軌道と姿勢の力学 | 宇宙を回る衛星の通り道と、向きを思いどおりに変える計算 |
| 軌道上サービス | 宇宙で衛星に近づき、ロボットの腕で捕まえて、燃料を入れたり直したり片づけたりする |
| 大気圏への再突入 | 宇宙から地球に帰ってくるカプセルを、ねらった場所に落とす |
| 宇宙の推進 | 宇宙で衛星を動かすエンジン |
| 惑星探査ロボット | 月や火星を自分で考えて走る探査車 |
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「Research」(研究の7つの領域から5つを選んだ。中学生向けの言い方は小池が言い換えた)
いま世界で大きな問題になっているのが「宇宙のごみ(スペースデブリ)」です。使い終わった衛星や、ロケットの破片が地球のまわりを回り続け、動いている衛星にぶつかる危険があります。こわれた衛星には、つかまるための取っ手も、通信する機能もありません。研究室は、そんな相手に約2kmまでカメラとセンサーで近づき、数mまで来たらロボットの腕で捕まえるしくみを研究しています。
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「On-orbit Servicing - 軌道上サービス」


東北大学の宇宙ロボットの歴史は、吉田先生の研究室の歴史です。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1997年 | 世界で初めてのロボット実験衛星「技術試験衛星VII型(おりひめ・ひこぼし)」の宇宙での実験に参加 |
| 2003〜2010年 | 小惑星探査機「はやぶさ」で、小惑星イトカワの砂をとる技術の開発と、持ち帰った砂の分析にかかわる |
| 2009年〜 | 超小型の人工衛星「RISING」「RISING-2」を打ち上げ、地球の写真をとる |
| 2011〜2018年 | 月面探査のレース「Google Lunar XPRIZE」に日本のチーム「HAKUTO」として挑む |
| 2020年代 | 月の基地を作るロボット「MoonBot」の研究(国のムーンショット型研究開発事業) |
出典:東北大学 宇宙探査工学 吉田研究室「Research」「About」
吉田先生は2010年、「はやぶさ」の功労者として国から感謝状を受けています。
出典:東北大学 宇宙探査工学 吉田研究室「About」(主な受賞:2010年「はやぶさ」功労賞感謝状〈宇宙開発戦略本部および文部科学省〉)


いちばん夢があるのが、月面探査のレースです。ルールは、民間の力で月に探査車を送り、月面を500m走って、高画質の映像を地球に送ること。 日本のチーム「HAKUTO」は、東北大学の研究者と、宇宙の会社 ispace などのメンバーでできていて、吉田先生はチームを指導する1人でした。
HAKUTO が月に送ろうとした探査車「SORATO(ソラト)」は、重さわずか4kg。世界でいちばん小さくて軽い、宇宙で使える探査車です。もとになったのは、吉田研の10年以上の研究です。2015年にはレースの中間賞(50万ドル)を受けました。レースは2018年3月に期限を迎え、SORATOは、いまアメリカのスミソニアン国立航空宇宙博物館に収められています。
出典:東北大学(英語版ニュース)「Team HAKUTO and SORATO」(2017年12月18日)、「SORATO finds a new home at the Smithsonian」(2019年10月29日)
HAKUTO を追ったレースの公式チャンネルの動画です(6分)。吉田先生が、なぜ月の洞窟を探査車で調べたいのかを語ります。字幕は英語ですが、チームのメンバーが真剣に月を目指す姿は、見るだけで伝わります。
動画:Lunar XPRIZE(Google Lunar XPRIZE の YouTube 公式チャンネル)
レースの経験は、月への着陸船を作る会社 ispace に受け継がれました。
出典:東北大学 宇宙探査工学 吉田研究室「Research」
まずは東北大学が作った、吉田先生の研究室のドキュメンタリーです(14分)。吉田先生と研究室の学生が、月や小惑星へ行くロボットの研究を語ります。外国からの留学生も登場します。
動画:東北大学震災10年の知と未来事業(東北大学の YouTube 公式チャンネル)「険しき星をゆく!~宇宙ロボットたちの冒険~」(2021年)
次は、吉田先生本人のTEDxの講演です(16分)。手のひらにのるような小さな衛星と探査車が、宇宙開発をどう変えるかを話します。小さな衛星がとった地上の写真や、ロケットの打ち上げの写真も出てきます。
動画:TEDx Talks(TEDx の YouTube 公式チャンネル)「宇宙へ飛びたて!-マイクロサットとマイクロローバーが宇宙開発を変える」(TEDxTohoku、2014年)
3本目は、吉田先生のいまの研究「MoonBot」です(1分)。部品をつなぎかえると、小さな車にも、竜のような細長い形にも、三輪車にもなる月面ロボットです。砂の上で形を変えながら走るようすを、速回しで見せます。
動画:Space Robotics Lab(吉田研究室の YouTube 公式チャンネル)


研究室から生まれたものの1つ目は、人工衛星です。東北大学では、衛星の設計・製造・試験・運用のすべてに学生がかかわります。
代表が、研究室が中心になって作った超小型衛星「RISESAT(ライズサット)」です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 重さ・大きさ | 59.3kg、50cm×50cm×50cm |
| 打ち上げ | 2019年1月18日、イプシロンロケット4号機(JAXA) |
| 載せた装置 | 国内外の10の機関の実験装置 |
| できたこと | 630色に分けて地上を撮影し、約3.5mのものまで見分けた |
| 終わり | 2023年3月に大気圏に再突入し、約4年の運用を終えた |
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「超小型国際理学観測衛星ライズサット - RISESAT」
1秒に7km以上の速さで飛びながら、地上の1か所にカメラを向け続ける。 これが RISESAT のいちばんの技術です。衛星の向きを細かく、すばやく変える計算が、ここで生きています。
2つ目は、会社です。研究室の研究をもとに、東北大学発の宇宙の会社 ElevationSpace(エレベーションスペース)が生まれました。桒原先生は会社をつくった1人で、2021年から2024年まで役員(はじめは技術の責任者)を務めました。
ElevationSpace が目指すのは、宇宙で実験したものや作ったものを、カプセルに入れて地球に持ち帰るしくみです。いまは宇宙から物を持ち帰れる機会が少なく、ここが宇宙の実験のネックになっています。1号機の ELS-R100(100kg級)は、2026年度の宇宙での実験を目指しています。2022年には、大学発ベンチャー表彰で NEDO(国の研究開発の機関)の理事長賞を受けました。
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「エレベーションスペース社との共同研究 - ElevationSpace」「Toshinori Kuwahara」
3つ目は、月の会社 ispace です。前の節で書いたとおり、HAKUTO のレースの経験が ispace に受け継がれました。


研究室を率いるのは、桒原 聡文(くわはら としのり)教授です。
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「Toshinori Kuwahara」、researchmap「桒原 聡文」
研究室のメンバーは、教授と特任助教が1人ずつ、博士課程12人、修士課程13人、学部の4年生3人と3年生2人です。研究のテーマには「火星探査ローバーの自律制御」「宇宙ロボティクス技術」「ステレオカメラを使った宇宙機の動きの推定」などが並び、外国からの留学生もいます。
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室「Members」(人数は公式サイトのメンバー一覧を2026年10月12日に数えたもの)。研究室の卒業生の就職先は公式に出ていないので書いていない
桒原先生が、2025年の東北大学オープンキャンパスで高校生向けに話した講義です(37分)。会場には約300人が集まりました。宇宙のインフラとは何か、宇宙で衛星を捕まえて直したり片づけたりする技術がなぜ要るのかを、スライドで順に説明します。いちばんこの研究室に近い動画です。
出典:東北大学 宇宙インフラ工学研究室 ニュース(2025年7月31日)。動画:東北大学オープンキャンパス 青葉山キャンパス(YouTube 公式チャンネル)「軌道上サービス技術が拓く宇宙インフラの将来展望」
吉田先生は、いまは東北大学の未来科学技術共同研究センターの特任教授として、月の基地を作るロボットの研究を率いています。2026年4月には、電子ビームで月の砂を溶かして固め、月面に道や着陸場を作る研究が、JAXA の宇宙戦略基金に選ばれました。大学院の入試で研究室を選ぶ一覧(2026年度)に載っているのは、桒原先生の研究室です。
出典:東北大学 宇宙探査工学 吉田研究室(サイトのトップ・「About」)、東北大学ニュース(2026年4月24日)、東北大学大学院工学研究科 機械系「大学院入試志望調査票用 研究室番号表(2026年度)」


道は3つあります。
| 道 | 流れ |
|---|---|
| 東北大学に入る(学部から) | 工学部 機械知能・航空工学科に入る → 2年生の10月に「航空宇宙コース」を選ぶ → 3年生の5月に研究室に配属される |
| 高専から入る | 高専を卒業して、東北大学工学部に編入する |
| ほかの大学から入る(大学院から) | ほかの大学の理系の学部を卒業する → 東北大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻の博士課程前期(修士)の入試に受かる |
出典:東北大学工学部 機械知能・航空工学科(学科のサイトのトップ・「航空宇宙コース」)、東北大学 工学研究科・工学部「よくある質問」「編入学試験」
東北大学の工学部は、どの学科で学ぶかを出願のときに決めます。宇宙をやりたいなら、機械知能・航空工学科です。研究室に入るのは3年生の春。工学部のほかの学科の多くは4年生からなので、1年早く研究を始められます。ただし、希望の研究室に入れるとは限りません。 研究室ごとに入れる人数が決まっていて、希望と成績で決まります。
大学院の入試でも同じです。出願のあとに入りたい研究室を書き、合格した人から成績順に研究室へ入ります。
出典:東北大学 工学研究科・工学部「よくある質問」、東北大学大学院工学研究科 機械系「2026年度実施 研究室配属方法」
それでも、大学院から入る道は本物です。桒原先生自身が、九州大学から、ドイツの大学院を経て東北大学に来た人です。研究室は、大学院からもう一度選び直せます。
東北大学そのものは東北大学はどんな大学?に、理系の学部の選び方は理学部・工学部・情報学部ってどんな学部?にまとめました。






東北大学の工学部は、毎年2回、研究室を見られる日を開いています。
| イベント | いつ | 中身 |
|---|---|---|
| オープンキャンパス | 毎年7月下旬(2026年は7月29・30日で、もう終わった) | 工学部のすべての学科・研究室を自由に見学できる。高校生向けの講義・実験もある |
| 機械・知能系 研究室公開 | 毎年3月中旬の予定 | 機械・知能系の研究室を自由に見学できる。高校生も参加できる |
出典:東北大学大学院工学研究科 機械系「オープンキャンパス・見学」「オープンキャンパス2026」。個人での研究室の見学は原則受け付けていないので、このどちらかに行くこと
宇宙のロボットを作るには、物理と数学がいります。衛星の通り道は、中学の比例と、高校の三角比・ベクトル・微分で計算します。月の探査車の向きや位置を決めるのも同じ数学です。宇宙の論文はほとんどが英語で、研究室には外国からの留学生もいます。中学生のうちは、数学の関数と図形、理科の力と運動から逃げないこと。これがいちばん宇宙に近づく勉強です。


宇宙のごみを捕まえるロボットも、1本の式の積み重ねで動いています。まずは目の前の1問を、最後まで自分で解き切りましょう。








ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて