将来やりたいことの見つけ方:AIに聞かれて分かった「野球が好き」の奥にあったもの

木の壁を背にした工房のような部屋で、カンナで木の棚を削りながら没頭して得意げな表情の塾長。手元のノートパソコンには学習アプリの画面。すぐ後ろ・右側から福沢諭吉のちびキャラが本を抱えて感心したようにうなずきながら覗き込んでいる。左側は余白の木の壁。「自分の価値観から」「仕事を選ぶ」の文字。

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

「将来、何をやりたい?」

こう聞かれて、すぐに答えられる中学生は多くありません。答えられても「ゲームを作りたい」「サッカー選手」のように、職業の名前が出てくることがほとんど。

でも、職業の名前から探すと、だいたい外れます。中学生が知っている仕事は、世の中の仕事のほんの一部だから。

先に分かっておくべきなのは、自分はどんなときに夢中になるのか、どんな場所なら力が出るのか。

小池は先日、これをAI(Claude)に話を聞いてもらいながらやってみました。この歳になって、自分でも気づいていなかったことが次々に言葉になりました。

今日は、そのやりとりを全部見せます。AIの見立てが外れて、小池が言い直して、少しずつ見えてきた過程こそ、いちばん見てほしいところです。まなぶ君に、同じことができる「じぶんノート」を作りました。

目次

最初は「野球が好き」だった

物置部屋で、古く使い込まれた野球のグローブを手に取り、懐かしそうに見つめる大人の塾長。まわりに古いアルバムや段ボール箱。「野球そのものが 好きだった?」の文字。

最初に、小学生のころに一番熱中したことを話しました。

塾長 小池

小学校のころ、少年野球にものすごく熱中した。やればやるほど上達したし、3番・ピッチャーのエースになれて、弱かったチームがだんだん勝てるようになっていったのが面白かった。当時は野球そのものが好きだと思っていたけど、中学に入って怪我をして、チームの中心じゃなくなったら、あまり楽しくなくなったんだよね。

AI

好きが消えたときを見ると、何が好きだったかが分かります。楽しくなくなったのは、野球をやめたときではなく「中心でなくなったとき」。だとすると、好きだったのは野球そのものより、こっちかもしれません。

書いたこと
表面の好き野球
奥の好き小さくてもいいから、自分が中心になって、自分の力で結果を出すこと
それが分かった出来事中学で怪我をして中心でなくなったら、野球が楽しくなくなった

ここでまず1つ目の発見。自分では「野球が好き」だとずっと思っていたのに、好きだったのは「中心で結果を出すこと」でした。

皆さんも「〇〇が好き」と思っているものがあったら、それが楽しくなくなった瞬間を思い出してみてください。そこに、本当の好きが隠れています。

横に並べたら、野球が消えた

1つの思い出だけだと、どうしても表面で止まります。AIは「ほかにも夢中になったことは?」と聞いてきました。小池は、庭で3〜4人でやっていた野球の話、大学で草野球チームを作った話、受験で古文を捨てた話をしました。

塾長 小池

庭では3〜4人しかいないから、ルールを工夫してた。ベースは一塁だけ、フェアゾーンを5〜10度くらいまで狭くして、カウントは1ストライク1ボールから、近所の家のほうに打ったらアウト。大学の草野球では、みんなが「練習してからじゃないと無理」って言うのに、先にグラウンドを押さえて試合を組んだ。やってみたら、それなりに試合になった。

AI

エピソードを横に並べて、それぞれで何をしていたかに印を付けてみます。

エピソード中心に立つルールや作戦をつくるまず動く目標から逆算
少年野球のエース○
庭の3〜4人野球○○○○
大学の草野球○○○○
受験で古文を捨てる○○○
名古屋旅行のために3万円貯金○
AI

何度も出てくるのは「目標から逆算」と「ルールや作戦をつくる」。野球という言葉は、もう表に出てきません。キャラで言うと「作戦を立てて、自分で試合を組むエース」。選手兼監督です。

並べた瞬間、野球が消えました。これが2つ目の発見です。1つの思い出を深く掘るより、いくつかの思い出を横に並べて、何度も出てくるものを探すほうが、自分の芯に近づけます。

AIの見立てが、外れた

夜、自宅の机でノートパソコンに向かい、画面のチャットのやりとりを見ながら思わず笑ってしまう大人の塾長。「AIの予想は 外れました」の文字。

次に話したのは、小学生のころのキャンプと誕生日会です。ここで、AIの見立てが初めて外れます。

塾長 小池

3〜4家族で、毎年のようにバスを借りてキャンプに行ってた。大人たちはずっと宴会、子どもは原っぱで野球やドッジボール、探検。何が楽しかったのかよく分からないけど、めちゃくちゃ楽しかった。

AI

「よく分からない」は普通です。言葉を貸すので、近いものを選んでください(いくつでも)。

  • 非日常
  • 大人の目がない自由
  • みんなが集まる場
  • 仲良くなること

小池が選んだのは「非日常」「みんなが集まる場」「仲良くなること」。

AIがいちばん自信を持っていたのは「大人の目がない自由」でした。大人が宴会をしている間に、子どもだけで勝手に遊ぶ。塾で小池が言っている「やり方は教えない、自分で走らせる」につながる、という読みです。

でも、小池は選びませんでした。

AI

「大人の目がない自由」は選ばれませんでした。この見立ては外れです。選ばれた3つと、今の家の話(子どもの友達が集まれるように設計した家)を合わせると、見えてくるのは「人が集まって熱くなれる場を、自分でつくる」ことかもしれません。

ここが、この自己分析でいちばん面白かったところです。AIの見立ては外れます。 でも、外れたものを「違う」と言えると、自分の答えがはっきりします。選ばなかったカードも、ちゃんと情報になる。

もう一度、外れた

AIは「全部のエピソードに『仲間と』が入っている」と言いました。小池は、それも違うと思いました。

塾長 小池

確かに仲間と何かをやるのはすごく楽しい。でも一人の時間も好きなんだよね。一人でAIに向かって何かを作るとか、DIYで大工をやるとか。とにかく何かを作るのが好き。

AI

「楽しかった思い出は?」と聞いたので、人と一緒の話ばかり集まっていました。聞き方が偏っていました。並べ直すと、共通しているのは人数ではなく「つくる」です。

仲間と一人で
庭野球のルールをつくるAIでまなぶ君をつくる
草野球の試合をつくるDIYで家具や部屋をつくる
海で、材料もレシピもない変な汁をつくる受験で、自分の勉強のやり方をつくる
友達が集まれる家をつくる

2回目の外れで、芯が「つくる」に決まりました。

仲間とやるときは、場やルールを仕掛けて、みんなの反応を見る「仕掛け人」。一人のときは、没頭してものをつくる「つくり手」。 やり方は2つあるけれど、動詞は同じ。

楽しくなかった時期を、聞かれた

AIは次に、谷(楽しくなかった時期)を聞いてきました。「話したくなければ飛ばしていいよ」と添えて。

塾長 小池

中学は空気感が好きじゃなかった。頑張ってる人を馬鹿にする空気があって、体育のサッカーで走ってると「必死になって汗かいて、馬鹿らしい」って言う子が多かった。「あいつ調子乗ってるよな」って、出る杭を打つ空気がすごくつらかった。高校はそんなことなくて、みんなが一生懸命で清々しかった。「自分は自分、人は人」。それぞれの世界を持っている人が多かった。

塾長 小池

会社員時代もつらかった。朝何時に行って、夜何時までいなきゃいけない。企業と人の間に入って日程調整するとか、システムでやればいいのに、って思う仕事が虚しかった。企業の人から話を聞くのは楽しいのに、それを文章にまとめるのにものすごく時間がかかる。

AI

谷を並べると、力が出る場所と出ない場所が見えてきます。

力が出る場力が出ない場
本気が普通の場所(高校)頑張る人を笑う場所(中学)
「自分は自分、人は人」「調子乗ってる」と出る杭を打つ
自分で決めて工夫できる時間に縛られ、機械でできる作業を人が回し続ける(会社員)
AI

会社員のとき欲しかった「録音して、文字にして、人は話を聞くことに集中する」仕組みは、今つくろうとしている「話した言葉をAIが整理するノート」とそっくりです。谷が、今の仕事の設計図になっています。

言われてみて驚きました。つらかった会社員時代の「こうだったらいいのに」が、そのまま今まなぶ君でつくっているものになっていました。

そして、ここまでの山と谷をつなぐと、こんなグラフになりました。

小池の熱中グラフ。横軸は小学校・中学・高1,2・高3・大学・会社員・今。小学校(エース・誕生日会)、高3(逆転合格)、今(塾・家・DIY)が山、中学(怪我・笑う空気)と会社員(時間と作業に縛られる)が谷。

高2のとき、小池は学年で下から2番でした。そこから高3で逆転合格できたのは、野球で「やればうまくなる」を経験していたから。前の山が、次の谷を越える力になっていました。

強みの裏を、正直に言ったら

夜、書斎の椅子で本を開いたまま片手で古いラジオのつまみに触れ、少し考え込む表情の大人の塾長。まわりに本棚。「得意の裏に ある弱さ」の文字。

最後は強みです。AIは「強みごとにエピソードを2つ以上」「その強みで困ったことは?」と聞いてきました。

強みエピソード裏返すと
ハマって深掘り野球の漫画とゲーム、受験の勉強法、AI、DIYハマっているときに別の用事が入ると、イライラして逃げたくなる
選択と集中古文を捨てて早慶上智一本。テニスはサーブだけを磨いてチーム1番にし、まず団体戦のレギュラーにそれしかできない。古文を捨てた分、教養が薄い
常識にとらわれない9人いなくても野球をする。練習より先に試合。大学の授業をサボってHTMLを勉強し、サイトを作るコツコツ授業に出る感覚が薄く、留年した
AI

1つ仮説があります。「選択と集中」の裏返し(教養が薄い、受験の英語がテクニカルに寄った)が、今の小池先生の考え方とちょうど逆向きです。今、生徒に「教養」「本質」「パターン暗記をしない」と言っているのは、自分が取りこぼしたものを、生徒に取りこぼさせないためではないですか?

塾長 小池

うん、当たっていると思う。本質を理解していない部分は、授業をしていても説明できないし、表面的に伝えるだけだと面白い授業ができない。「ごまかしながらやってるな」って思う教科や部分だってある。そうすると生徒の熱狂も生まれない。自分がサボった分が、今の自分に返ってきている。だからこそ、本を読んだり、ラジオを聞いたりして努力してるんだけどね。

ここが、いちばん深いところでした。弱みの自覚から、その人の価値観が生まれる。 小池が塾でしつこく「本質」と言い続けている理由を、AIとの会話で初めて自分の言葉で説明できました。

最後に残ったもの

会話の最後に、ノートはこうまとまりました。

中身
芯の動詞つくる(ルール・試合・場・家・勉強のやり方・まなぶ君)
キャラ仕掛け人(仲間と企んで、真ん中で反応を見る)/つくり手(一人で没頭する)
強みハマって深掘り、選択と集中、常識にとらわれない
力が出る場本気が普通/自分は自分、人は人/自分で決めて工夫できる
力が出ない場頑張る人を笑う/時間に縛られ、機械でできる作業を人が回し続ける
動機自分のためにやるとき、いちばん力が出る

最後の行も大事です。「人の役に立つ仕事がしたい」が立派な答えだと思われがちですが、小池は自分のためにやるときに力が出ます。どちらが正しいということはありません。自分はどっちなのかを知っていることが大事。

自分の価値観から仕事を選ぶ

ここまでで見えてきた、芯の動詞・強み・力が出る場・動機。これをまとめたものが、自分の価値観です。職業の名前から探すのではなく、この価値観に合う仕事を探す。順番が逆です。

この価値観から、AIに「生きる働き方」を業界をまたいで出してもらいました。答えではなく、「試しに見てみる候補」です。

働き方仕事の例生きる強み
事業をつくる起業、新規事業の責任者、塾・教室の経営選択と集中、常識にとらわれない
仕組みや遊びのルールをつくるゲームのプランナー、レベルデザイン、プロダクトマネージャー庭野球のルール作りは、ゲームデザインそのもの
手を動かしてつくるエンジニア、Web制作、建築・設計ハマって深掘り(HTML、AI、DIY)
作戦を立てる戦略企画、スポーツのアナリスト選択と集中、目標から逆算

どれも「つくる」側、つまり何をつくるか自分で決める上流の仕事です。

そして、合う働き方と合わない働き方を並べると、こうなります。

力が出る働き方力が出にくい働き方
事業や仕組み、遊びのルールをつくる調整や、決まった作業を回すのが中心
自分で決めて工夫できる決まった時間に縛られる
本気が普通の仲間がいる頑張る人を笑う空気
自分のためにやれる「誰かのため」だけが理由になる

右の列は、会社員のときにつらかった仕事とぴったり重なります。左の列の先に、今の塾とまなぶ君があります。

15歳でこの価値観が分かっていたら、もう少し早くここにたどり着けたかもしれません。職業の名前は、価値観が見えてからで十分です。大学に行けば、いろんな業界をインターンで実際に試してから選べます。そのときに、この価値観が物差しになります。

歴史の偉人に例えると

最後に、AIに「教科書に出てくる偉人に例えると?」と聞いてみました。

AI

いちばん近いのは、福沢諭吉かもしれません。

小池のノート福沢諭吉
塾をつくる(仕掛け人)蘭学の塾を開き、のちの慶應義塾をつくった
選択と集中・常識にとらわれない必死に学んだオランダ語が、開港した横浜でほとんど通じないと知ると、すぐに英語に切り替えた
本質・教養を大事にする『学問のすゝめ』で、暮らしに役立つ学問を自分で学ぶ大切さを説いた
自分で決める・自分のために「独立自尊」。人に頼らず、自分の考えで立つことを大事にした
AI

もう1人挙げるなら、織田信長。楽市楽座で、誰でも商売ができる市場という「場」をつくりました。常識にとらわれず、新しいやり方を次々に試した人です。

オランダ語をあっさり捨てて英語に乗り換えた話は、小池が古文を捨てて早慶上智に絞った話と、少し似ています。ちなみに小池は、その慶應義塾の卒業生。偶然ですが、ちょっとうれしい。

偉人に例えると、自分の芯が一言で言えるようになります。歴史の授業で習う人たちも、みんな「何かに夢中になった普通の人」でした。

やってみて分かった、3つのこと

分かったことなぜ大事か
自分の言葉で、思い出を話すだけでいい「強みは?」と聞かれても出てこない。出来事を話せば、AIが整理してくれる
AIの見立ては外れる。それでいい「違う」と言い直すたびに、自分の答えがはっきりする。選ばなかったカードも情報になる
表で返ってくると、自分が見える文章の塊では気づけなかった共通点が、並べた瞬間に見える

まなぶ君の「じぶんノート」で、やってみよう

小池とAIがやったことを、まなぶ君でできるようにしました。それが「じぶんノート」です。

  • AIが、夢中になったこと・楽しくなかった時期・強みと裏を、1つずつ聞いてくれる
  • 見立てはカードで出てくるので、近いものを選ぶだけ。「どれも違う」も選べる
  • 話がたまったら「ノートにまとめる」を押すと、熱中グラフと表ができる
  • 「大事にしたいことカード」で、20枚から最後の1枚まで絞ることもできる
まなぶ君「じぶんノート」の大事にしたいことカードの画面イメージ。20枚の丸いトグルカードのうち、「自分で決められる」「中心に立つ」「工夫してつくる」「深く極める」「挑戦する」の5枚が青い枠で選択されている。
まなぶ君の画面のイメージ

1回で全部やらなくて大丈夫です。スマホのキーボードのマイクで、しゃべって入れてもOK。書いたことは、皆さん本人と先生しか読めません。話したくないことは飛ばしてかまいません。

学年が上がるたびに書き足していくと、中1の自分と中3の自分を並べられます。答えが変わるのは当たり前。変わった理由まで含めて、それが皆さんの財産になります。高校入試の面接や、推薦の志望理由を書くときにも、そのまま使えます。

夜の工房のような部屋で、木の棚を手作りしながら没頭して満足げな表情の塾長。かたわらのノートパソコンには学習アプリの画面。奥には机で勉強する制服の生徒たちと、窓の外の庭で野球をする子どもたち。画面の端から本を抱えた歴史上の学者が微笑んでうなずいている。「自分の軸は「つくる」」の文字。

やりたいことは、職業の名前の前に。まずは、自分の価値観から。

ランゲージ・ラボラトリー 小池

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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