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ランゲージ・ラボラトリーの小池です。
進路の話をしていると、専門学校の名前がよく出てきます。「アニメを作るの楽しそう」「お菓子作るの面白そう」「美容師かっこいい」「子どもが好きだから保育士」。どれも、いい動機だと思います。小池も否定しません。
ただ、専門学校は大学と違って、生徒の側に判断材料がほとんどないまま話が進みます。偏差値もない、合格実績もない、パンフレットは「就職率98%」。だから塾では、この話題は毎回議論になります。
この記事では、小池が進路面談で話していることを、そのまま書きます。前半は専門学校ぜんぶに共通する見方。後半は、よく聞かれる仕事ごとの答えです。


最初に押さえておきたいのは、専門学校は行きたければほぼ入れる、ということです。
大学は入試で落ちます。だから「合格した」が実績になる。専門学校は原則として書類と面接で、定員割れしている学校も多い。「専門学校に合格した」は実績ではなく、進路の選択です。
これは悪いことではありません。ただ、入るのが簡単な学校ほど、出た後のことを入る前に考えないといけない。ここが大学との決定的な違いです。


パンフレットの就職率は、卒業した直後に就職した人の割合です。3年後にその仕事を続けている人の割合ではありません。
3年後がどうなっているか。数字で見るとこうです。
つまり、お菓子と美容は、専門学校を出て就職した人の半分以上が3年で辞めている業界です。「98%」と「半分以上」は両方とも本当で、見ている時点が違うだけ。
専門学校を選ぶなら、学校に聞く質問は1つです。「この学校の卒業生は、3年後に、どんな仕事で、いくらもらっていますか」。答えられない学校は、やめたほうがいい。看護・歯科衛生士・公務員のように国家資格や試験に直結する専門学校は、この心配が小さいです。




なぜ辞める人が多いのか。給料の話をする前に、仕事の構造を知っておいてほしい。
仕事には、上流と下流があります。上流は「何を作るか」を決める人。下流は、決まったものを手足になって形にする人。どの業界にもこの2つがあって、給料も、働き方も、上流と下流でまったく違います。
小池に身近なテレビの世界で例えるとこうなります。プロデューサーが企画を考える。現場の制作スタッフは何日も徹夜して番組を作り、「あれ買ってこい」と言われて使い走りをする時期を過ごす。ここまでは、キー局の社員も下請けの制作会社の社員も同じです。20代の下っ端時代は、どちらもきつい。
違うのは、その先です。同じ「テレビの仕事」で、40歳になったときの姿を並べてみます。
生活も違います。制作会社の現場には「30時終了」という言い方があります。朝10時に集合して、24時を回って、翌朝6時に終わる。それが「ザラ」だと、制作会社の40代プロデューサーが話しています。固定給は10万円台前半、残業代はゼロ、有給は1日も取ったことがない(弁護士ドットコム、2018年)。朝6時に終わって、家に帰って、また10時に集合なら、寝られるのは3時間です。業界団体の調査でも、制作会社のADの残業は月平均84時間で、過労死ラインの80時間を超えています。最長の人は月171時間。休みなしで毎日、朝10時から夜11時半まで働く計算です(全日本テレビ番組製作社連盟 加盟55社の調査)。
同じ徹夜でも、キー局なら「いつか上に上がる」までの数年。下請けなら、40歳になっても、給料が半分のまま、その生活が続く。これが下流に居続けるということです。




専門学校から入る仕事は、多くの場合この下流の入口です。アニメなら監督の指示どおりに絵を描く「動画」。お菓子なら朝4時から仕込みをする見習い。美容なら1年目のシャンプー担当。下流は代わりがいくらでもいて、いちばん過酷な場所。そこから上に上がる道があるかどうかが、専門学校選びの本当の論点です。






もう1つ、今の中学生には避けて通れない話があります。
下流の仕事の中には、AIに置き換わりそうなものがあります。アニメで言えば、もとになるキャラクターの絵や世界観を作るのは、これからも人の仕事だと思います。でも、その数枚の絵をもとに角度を変えた絵を描く、間の動きを足す、という作業はAIが得意なところです。下流の仕事ほど先に減ります。
一方で、保育や美容のように、目の前の人に触れる仕事はAIに置き換わりません。子どもを抱き上げるAIも、髪を切るAIも、当分は出てこない。
だから仕事によって、心配する場所が違います。アニメは「入口がなくなるかもしれない」。保育は「入口はなくならないが、天井がある」。同じ専門学校でも、見るべき数字が違う。後半の仕事ごとの話は、この違いを軸に書いています。




ここが、小池がいちばん言いたいことです。
皆さんは今15歳前後で、学校に通ってきた期間は9年です。仕事は、そこから40年続きます。今までの人生の何倍もの長さを、同じ仕事で過ごすことになる。
思い出してほしいのですが、4歳のころに「何になりたい」と聞かれたら、仮面ライダーかプリキュアと答えていたはずです。それから11年で、なりたいものは何度も変わった。15歳の今の答えが最後の答えだと考える理由は、どこにもありません。
そして正直に言うと、15歳で決めたことを40年続ける人は少ないです。塾の卒業生を見ていても、自分の同級生を見ていても、そうです。「思っていたのと違った」「最初は楽しかったけど、数年やったら飽きた」「体力がきつくなってきた」「現場じゃなくて、企画する側に回りたい」。こういう気持ちは、途中で必ずと言っていいほど出てきます。飽きっぽいからではなく、人は変わるからです。
だから小池が進路で見ているのは、「その仕事に就けるか」だけではありません。10年後に気が変わったとき、動ける入口かどうかです。上流に上がれるか。横の別の仕事に移れるか。この2つの道がある入口と、その仕事の中で完結してしまう入口がある。
大学経由は、この2つの道が最初から開いています。専門学校経由は、閉じていることが多い。専門学校を否定しているのではなく、選ぶなら「動ける学校か」を確かめてほしい、という話です。










「アニメを作りたい」は、専門学校の志望でいちばん多い動機です。そして小池が見ている中で、いちばん心配な入口でもあります。理由は3つ。給料が極端に安い、辞める人が多い、そしてAIに置き換わる仕事から入るからです。
アニメの専門学校を出て制作会社に入ると、最初にやるのは「動画」という仕事です。原画と原画の間の絵を描く仕事で、1枚いくらの出来高払い。単価は数百円で、新人が1か月に描けるのは300〜400枚。月にして6〜10万円です。
業界団体の調査でも、数字はこうなっています。
月225時間働いて、手取り10万円台。館山で一人暮らしをしても足りない額で、東京の家賃は払えません。だから新人の多くは親からの仕送りで暮らすか、辞めるか、どちらかになります。
同じ調査の職種別の平均年収を並べると、こうなります。
| 職種 | 平均年収 | 仕事 |
|---|---|---|
| 監督 | 733.8万円 | 作品全体を決める |
| プロデューサー | 627.9万円 | お金と人を集める |
| 演出 | 497.1万円 | 話数ごとの責任者 |
| 3DCG | 347.2万円 | コンピューターで動かす |
| 制作進行 | 344.9万円(平均29歳) | 進行管理。絵は描かない |
| 動画 | 227.5万円(平均27歳) | 原画の間の絵を描く |
(日本アニメーター・演出協会「アニメーション制作者実態調査2026」)
上に行くほど、絵を描く人ではなく作品を動かす人です。前半で書いた「上流と下流」が、この表そのもの。動画は下流のいちばん端で、動画から原画に上がれず、20代のうちに辞める人がいちばん多い入口です。専門学校のパンフレットに「就職率」は載っていても、「3年後に動画を続けている人の割合」は載っていません。聞いてみてください。
もう一つ、今から入る人にだけ関係する話があります。
動画の仕事は、原画という決まった絵と絵の間を、指示どおりに埋める仕事です。これは、今のAIがいちばん得意な種類の作業です。キャラクターのデザインや世界観や、「この場面でどう動かすか」を決める原画・演出は、当分は人の仕事だと思います。でも、その間を埋める作業は先に減ります。
つまり専門学校からアニメに入る人は、いちばん給料が安く、いちばん辞める人が多く、いちばん先にAIに置き換わる場所から入ることになります。10年後に「動画」という入口が今の形で残っているか、小池は疑っています。
では、上流の監督には何が要るのか。監督になった人を並べると、共通点がはっきり見えます。
型にすると、絵で入った人も、監督に上がる人は本と映画と歴史を絵と同じ量だけ入れている。作画監督やキャラクターデザインまでは絵の腕で上がれる。監督と脚本は、「何を語るか」の材料がないと上がれない。ここが上流と下流の境目で、材料の置き場は大学と読書です。
監督に要る力を言葉にすると、5つです。
ヒットする作品には、この力の結果がそのまま出ています。
だから、アニメを作りたい中学生に言うことは一つです。絵を描く時間と同じだけ、本と映画と歴史を入れてください。監督は絵が上手い人ではなく、いちばんたくさん見て、それを順番に並べ直せる人がなる。学校の勉強は、その入力と並べ直しの練習そのものです。
じゃあどうすればいいか。アニメを作る仕事への入口は、実は3つあります。
小池の考えは、絵で行くなら美大を目指して普通の勉強もする。作りたいなら大学に行って制作進行かCGから入る。専門学校は最後。どうしても専門学校なら、「動画」ではなく3DCG・撮影(コンポジット)・制作進行のコースがある学校を見て、卒業生の3年後の数字を聞いてから決めてください。
アニメが好きな気持ちは、そのまま持っていてください。好きなものを「作る側」に回る道は、絵を描く1本だけではない、という話です。






「子どもが好きだから保育士になりたい」は、塾でいちばんよく聞く専門学校の志望理由です。そして保育は、ここまで書いた話の中で例外が多い仕事でもあります。
まず、仕事はなくなりません。AIにも置き換わらない。人手不足なので、専門学校からでも大学からでも就職には困らない。給料も、アニメの「動画」とは別の世界です。
だから保育で見るべきなのは入口の危うさではなく、天井と横移動です。大学と専門学校で、何が違うのか。
専門学校(2〜3年)で取れるのは、基本的に保育士資格です。幼稚園教諭の免許は、取れない学校もあります。取れる学校でも、短大の通信課程と併修して二種免許、という形が多い。
短大(2年)は、保育士資格と幼稚園教諭二種免許がセットです。
4年制大学は、保育士資格と幼稚園教諭一種免許。教育学部なら、小学校教諭の免許も一緒に取れます。
「一種」と「二種」は、同じ幼稚園の先生の免許です。現場で最初にやる仕事は変わりません。でも、この差が10年後に効いてきます。
幼稚園の園長になれるのは、専修か一種の免許を持って5年以上勤めた人です。二種のままでは園長になれません。あとから大学で単位を取り直して一種に上げる道はありますが、働きながらです。
もう1つ。今、保育園と幼稚園を合わせた「認定こども園」が増えています。幼保連携型認定こども園で働く保育教諭は、原則として保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要です。片方だけで働ける特例は2030年3月末まで延長されていますが、主幹保育教諭・指導保育教諭といった上の役職は、2027年3月末までに両方を持っていることが条件になります。保育士資格しか持っていない人は、現場で働けても、上に上がるときに壁に当たります。
公立の保育士は自治体の職員で、多くの自治体で採用試験が「短大卒程度」「大卒程度」に分かれています。大卒区分のほうが初任給の格付けが上で、公立は私立より給料が高く、定年まで勤められる。保育の中でいちばん「上流」に近い席は公務員保育士で、大学卒のほうが座りやすい。
前半で書いた「10年後に気が変わったとき」の話を、保育に当てはめます。
保育は体力の仕事です。20代は子どもと一日中走り回るのが楽しい。でも30代、40代と進むと、「もう少し違うことをやりたい」「現場から上に上がりたい」という気持ちが出てくる人が多い。腰も痛くなる。
そのとき、大卒なら動けます。小学校の先生、児童相談所、市役所の子育て支援の部署、一般企業の大卒採用。専門学校卒だと、動き先はほぼ保育の中に限られます。
逆に、大学に行く道は片道切符ではありません。大卒なら、学部を問わず保育士試験の受験資格があります。普通の大学の普通の学部に行って、やっぱり保育がやりたいと思ったら、そこから保育士になれる。専門学校からは大学の学部に戻れないので、この「あとから来られる」は大学側だけにある特権です。
保育をやると決めているなら、短大か大学。大学に行けるなら教育学部で、保育士資格・幼稚園教諭一種・小学校教諭免許の3つを取る。入口は同じ保育でも、40年のあいだに動ける道が段違いです。
専門学校を選ぶなら、幼稚園教諭二種が取れる学校かどうかを先に確認してください。保育士資格だけの学校は、認定こども園が増えるこれからの時代に、いちばん先に天井に当たります。






「お菓子を作るのが好きだからパティシエ」。これも毎年聞きます。製菓の専門学校は1〜2年で、実習が楽しそうで、オープンキャンパスに行くとケーキを作らせてくれる。入口の印象は、専門学校の中でいちばんいいと思います。
数字はこうです。
3年で3人に2人が辞める。理由は、給料の安さと、朝の早さです。ケーキ屋の仕込みは開店の何時間も前に始まるので、朝5時6時の出勤が普通。立ちっぱなしで、土日は休めない。20代の体力で楽しくやれても、30代で結婚して子どもができたときに、同じ働き方を続けられる人は少ない。


お菓子の世界で上流にあたるのは、2つです。自分の店を持つこと。それと、食品メーカーで商品を企画すること。
自分の店は、パティシエの多くが目指す道です。ただ、店を持ってから残れるかどうかは、お菓子の腕ではなく数字で決まります。家賃、材料費、人件費、売上の計算。作れる人より、店を回せる人が残る。これは専門学校では教えてくれない部分で、簿記や経営の勉強が要ります。
食品メーカーの商品企画・開発は、コンビニのスイーツや大手菓子メーカーの新商品を作る仕事で、給料は製造業の水準です。ここは大卒採用が中心で、農学部・栄養学部・食品科学系から入ります。ケーキ屋の厨房より大きな規模で「お菓子を作る」仕事は、大学の側にあります。
「店を回せる人」を、もう少しはっきり書きます。腕は厨房の中の話。店は厨房の外にあって、外にあるのは4つです。
店を持つ瞬間には、もう一つ要ります。お金を借りて返せる信用です。開業には1,000万円単位の借金が要り、銀行に「返せる計画」を説明する。ここは数字と、説明する文章の力です。
この力は、中学生の今から順に作れます。
お菓子が好きな人は多い。でも、お菓子の値段の中身を言える人は少ない。その少ない側に回ってください。
お菓子をやると決めているなら、専門学校でいいと思います。製菓衛生師の受験資格が1年で取れて、現場に早く出られる。ただし、選ぶときは「卒業生の3年後」を聞いてください。そして入る前に、朝5時に起きる生活を40年続けられるか、一度本気で想像してほしい。
いつか自分の店を持ちたいなら、専門学校と並行して簿記を取ってください。腕のいい人が潰れて、数字に強い人が残るのがこの業界です。
大きな規模でお菓子を作りたい、安定した給料がほしいなら、大学の農学・栄養系から食品メーカー。これも「お菓子を作る仕事」で、しかも辞める人がずっと少ない道です。




美容師は、ここに書いた仕事の中で唯一、専門学校に行かないとなれない仕事です。美容師の国家試験は、美容の専門学校(昼間2年か通信3年)を出ないと受けられない。大学に美容学部はありません。だから「専門学校か大学か」ではなく、「どの専門学校で、どの店に入るか」がすべてです。
数字はこうです。
アシスタントの時代は、営業中はシャンプーと掃除と雑用で、カットの練習は営業が終わった後です。夜9時に店を閉めて、そこから練習して、帰るのは深夜。それで手取り14万円。これが2〜4年続く。ここで半分以上が辞めます。
「学校選びがすべて」と書いたので、良い学校の条件を書いておきます。名前ではなく、3つの数字です。
美容の世界には、表参道・原宿・青山の有名サロンに新卒で入る、という道があります。技術教育の水準が高く、「表参道の○○出身」という経歴は独立するとき一生の看板になる。前半の言い方をすれば、キー局にあたる入口です。下っ端でも、上に上がれる見込みがある。
名前が挙がる店を並べておきます。新卒アシスタントの条件は、2027年入社の募集要項と新卒求人からです。
| サロン | 店舗 | 新卒の月給 | 休日 |
|---|---|---|---|
| OCEAN TOKYO | 表参道・原宿 | 24万円+交通費 | 完全週休2日 |
| SHIMA | 原宿・青山ほか10店 | 22.6万円〜(残業手当込み) | 完全週休2日 |
| MINX | 表参道・銀座・原宿 | 22.5万円〜 | 完全週休2日 |
| PEEK-A-BOO | 原宿・表参道 | 22.5万円〜 | 完全週休2日 |
| LIPPS hair | 原宿ほか28店(千葉にも) | 20.9万円〜(研修中20.2万円) | 週休2日制 |
| AFLOAT | 表参道・銀座・新宿 | 20〜22.5万円(固定残業代込み) | 店により隔週休2日 |
意外に思うかもしれませんが、給料は地方の店より高い。安い店で修行するのが常識だった時代は終わりつつあって、有名店ほど待遇を公開して人を集めています。OCEAN TOKYOは「基準に達した人は全員採用」と公言していて、倍率ではなく基準の世界です。逆に、SHIMAの2027年入社は二次募集まで締め切り済み。動きの早い店ほど、早く閉まります。
ただし、アシスタント期間は3〜5年と長く、練習の量が桁違いで、東京の家賃がかかる。スタイリストになる前に辞める人がかなり多い。有名店に「入る」ことと「残る」ことは別で、勝ちと言えるのは残った人だけです。もう一つの勝ち方は、教育のしっかりした地元や地方の大手サロンで早くデビューして、指名を持って独立する道。派手さはないが、残る率はこちらが高い。
では、有名店に行けるのはどんな人か。器用な人でも、絵が上手い人でもありません。
つまり、早く動いて、人と話せて、続けられる人。これは中学生の今から作れる力で、勉強で言えば「提出物を期限に出す」「先生に質問に行く」と同じ種類のものです。
美容師の上流は、店長になるか、自分の店を持つかです。指名のお客さんを持ったスタイリストは歩合で稼げるし、独立も比較的しやすい。ただ、コンビニの5倍ある美容室の中で自分の店を残せるかは、これもお菓子と同じで、カットの腕より数字の話になります。
もう一つの上流は、化粧品メーカーです。資生堂や花王やコーセーの企画・研究・美容部員の教育をする仕事。これは大卒採用で、研究職は理系の大学院です。「美容の仕事」で給料がいちばん高いのは美容室ではなくメーカーの側で、そこへは専門学校からは行けません。
美容師をやると決めているなら、専門学校でいい。他に道がないからです。ただし、辞める半分に入らないために、学校と店を選ぶ基準を3つ持ってください。
美容師免許は一生ものなので、資格を取っておく価値はあります。迷っているなら、大学に行って、それでも美容がやりたければ通信課程で取る、という順番もあります。逆は難しい。




「服が好きで、服の仕事で食べていきたい」。専門学校で言えば文化服装学院のような学校で、志望は「デザイナー」が多い。
デザイナーは、1つの会社に数人しかいない仕事で、新卒でなれる人はごくわずかです。目指すのは自由ですが、それしか見えていないと専門学校を出た後に行き先がなくなります。服の仕事で現実に定着しやすいのは、次の4つです。
避けたほうがいいのは、販売員から入って上を目指す道です。小売業は就職して3年以内に高卒48.3%・大卒40.4%が辞めます(前と同じ厚生労働省の調査)。給料も上がりにくい。


デザイナーになった人の数は、学校も人数を出せないくらい少ない。日本最大の服飾校である文化服装学院でも、コム・デ・ギャルソンに入るのは年に7〜9人で、その多くは肩書きがパタンナーや企画です。自分の名前のブランドで食べていける人は、全国で年に数人だと思います。
それでも目指すなら、なった人の型を知っておいてください。
なれる人の感覚も、共通しています。
最後に、センスの話をしておきます。センスは生まれつきではなく、教養で作られています。世界一有名な服の学校、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーは、1年生でファッション史、2年生は歴史上の服装を選んでそこから作る、3年生は民族衣装、と3年かけて「過去に何があったか」を体に入れさせて、自分の好きなものを作らせるのは4年生の1年だけです。そして、有名デザイナーは学生のときから、卒業制作がすでに歴史の引用になっています。後にディオールのデザイナーになるジョン・ガリアーノが1984年にロンドンの美大で出した卒業制作は「レ・アンクロワイヤブル」。フランス革命の直後、恐怖政治が終わったパリで、わざと崩した服を着て歩いた若者たち(男はアンクロワイヤブル、女はメルヴェイユーズと呼ばれた)を題材にしたものです。社会の授業で習うフランス革命の、教科書には出ない続きの部分を、服にした。これをロンドンの店が全部買い取って、彼のデビューになりました。アレキサンダー・マックイーンの卒業制作は「切り裂きジャック」で、19世紀ヴィクトリア朝のロンドンの服と事件が元になっています。川久保玲は大学で哲学と美術史を学んだ人で、カール・ラガーフェルドは蔵書30万冊の人でした。
理由は簡単で、「なかったもの」を作るには、「あったもの」を知っていないといけないからです。デザインは引用と編集で、引き出しが流行の服しかない人は流行の真似しかできない。センスがいい人とは、たくさん見て、それがいつのどこの何かを知っていて、組み合わせを変えられる人です。国語で文章の構造を読む、社会で時代の流れを知る、美術で絵を見る。これがセンスの元手で、中学生の今やっている勉強と別のものではありません。
服の上流は、生地と数字の側にあります。デザイナーの入口は狭く、パタンナーとメーカーの入口は空いている。学校を選ぶなら、文化服装学院・杉野服飾大(偏差値BF〜35)・文化学園大(35〜37.5)は業界とつながっています。それ以外の専門学校は、卒業生がどの会社でどの仕事をしているかを学校に聞いてから決めてください。
専門学校に行くなと言っているのではありません。「楽しそう」の先に、40年分の自分を置いてから決めてほしい。決められないなら、決めなくていい。決めなくていい入口が、大学です。
迷っているなら、迷ったまま相談に来てください。決めてから来る必要はありません。
ランゲージ・ラボラトリー 小池




ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて