勉強は誰のため? ワクワクする仕事を選べる自分になるために

館山の海沿いの遊歩道で、ゲーム・映画・サッカー・世界を行き来する船や飛行機など将来の仕事を思い浮かべて目を輝かせる制服の中学生。「好きな仕事 選べる?」「勉強は誰のため」の文字。

ランゲージ・ラボラトリーの小池です。

「こんなの将来使わないでしょ」
「親がうるさいから、やってるだけ」

中学生になると、こう思う人が一気に増えます。

でも、今ならはっきり言えます。勉強は、誰かにやらされているものではありません。自分がワクワクする仕事を、自分で選んで、楽しく続けるためにやっているもの。

今日はその話と、「こんなの使わない」への小池の答えをします。

目次

将来、何をやってみたい?

いきなりですが、皆さんは将来どんな仕事をしてみたいですか。

  • ゲームが好きだから、ゲームを作る会社に行きたい
  • 漫画やアニメが好きだから、作品を作る側に回りたい
  • 映画を作ってみたい
  • スポーツが好きだから、スポーツに関わる仕事がしたい
  • 社長になって、自分の会社を持ちたい
  • 特にやりたいことはないけど、安定してちゃんと稼げる仕事がいい

どれもいいと思います。そして、こういう仕事はどれも、皆さんにやれるチャンスがあります。 ゲーム会社で働いている人も、アニメを作っている人も、社長も、みんな元は普通の中学生でした。

やりたいことは、変わる

ただ、1つ知っておいてほしいことがあります。

やりたいことは、変わります。

4歳のころ、「大きくなったら何になりたい?」と聞かれて、仮面ライダーとかプリキュアとか答えていませんでしたか。小学生になってサッカー選手、ユーチューバー、ケーキ屋さん。たぶん、何回も変わってきたはずです。

15歳から大学を卒業する22歳までの7年間も、同じくらい変わります。知らなかった仕事を知る。好きだったものに飽きる。新しく夢中になるものが出てくる。それが普通です。

だから、「やりたいことがまだない」も全然OK。むしろ今の答えが最後だと思わない方がいい。

大事なのは、やりたいことが決まったときに、そこへ行ける自分でいることです。

専門学校で、今の「好き」に決め打ちすると

たとえば今、アニメを作る仕事がしたいとします。いちばん近道に見えるのは、アニメの専門学校に行くこと。実際、専門学校を出てアニメの仕事に就くことはできます。

ただ、その先の数字を見てください。

アニメ業界で、20〜24歳の平均年収は200万円。絵を描く仕事の入口である「動画」の平均年収は228万円です(日本アニメーター・演出協会、2026年)。月にすると20万円いかない。そこから東京で家賃と食費を払います。

そして、業界に入った人のうち、4年以内に約4人に1人、8年以内に約7割が辞めています(日本総研の試算、2024年)。

好きで、やりたくて入った仕事のはずなのに。なぜ続かないのか。

入口で任されるのが、下流の仕事だから。

仕事には「上流」と「下流」があります。

  • 上流:何を作るか決める。企画する。お金を集める。チームをまとめる
  • 下流:決まったものを、言われた通りに手を動かして形にする

下流の仕事は、量が多くて激務です。しかも「アニメが好きで、絵が描ける人」は毎年たくさん入ってくるので、代わりがいくらでもいる。 給料は上がりにくく、使い捨てっぽくなってしまう。これからAIに置き換わっていくのも、下流の仕事からです。

もう1つ、専門学校の怖いところ。アニメの専門学校を出ると、アニメ以外の道に移りにくい。 途中で「思っていたのと違った」と感じても、選び直すのが大変です。やりたいことは変わるのに。

大学に行けば、いろんな業界を選べる

じゃあ、どうするか。小池の考えは、大学に行くこと。

大学を出ると、行ける業界の幅が一気に広がります。

  • ゲーム:何を作るか決めるプランナー、プロデューサー
  • 映画・アニメ:作品を企画して、お金を集めて、世界に届ける会社
  • スポーツ:チームの運営、スポーツ用品の開発、試合を中継するテレビ局
  • 不動産:街をつくる。駅前の再開発や、大きなビルを建てる計画
  • 商社:世界中を相手に、ものやお金を動かす。海外で働くチャンスも多い
  • IT:アプリやサービスを企画して、世の中の当たり前を変える

しかも、どれも上流の仕事に入れる入口です。自分で「何をやるか」を決められて、お金もきちんともらえる。

さらにいいのは、大学では、実際に試してから選べること。

大学3年生くらいになると、「インターン」があります。会社に行って、何日か実際にその仕事を体験させてもらう仕組みです。ゲーム会社のインターンに行ってみる。商社にも行ってみる。行ってみたら「思ってたのと違った」とわかることもあるし、「全然興味なかったけど、これ面白い」と見つかることもある。

いろいろ経験してから、選べる。 中学生の今、1つに決め打ちしなくていい理由は、ここにあります。

じゃあ、今の勉強はそこにどうつながる?

大学に行くには、もちろん勉強が要ります。好きな業界の上流に行くなら、せめて最低でもMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)以上を目指してほしいです。学歴は、会社が入口で使う足切りの目安になります。

でも、本質は学歴ではありません。

会社が本当に見ているのは、目の前のことに没頭して、最後までやり切れる人かどうか。 そして、それを自分から楽しんでやれるかどうか。

好きなゲーム会社に入っても、仕事の中身は地味な作業の連続です。そこで「やらされてる」と思いながら言われたことだけやる人と、「どうせやるなら面白くしてやろう」と自分から動く人。上に行くのは、もちろん後者です。

そして、その姿勢は中学生の今の勉強の姿勢と、そっくり同じ。

  • 定期テストに向けて、自分で計画を立てて、最後の1週間まで踏ん張る
  • わからない問題を、答えを見る前に30分粘ってみる
  • 言われた宿題だけで終わらせず、「なんでこうなるんだろう」を1つ調べてみる

勉強の姿勢が、そのまま仕事の姿勢になります。 今、勉強を「やらされるもの」にしてしまうと、好きな仕事に就いても、同じように「やらされる」働き方になってしまう。逆に、今の勉強を自分のものにできた人は、どの業界に行っても強い。

学歴は、その「やり切ってきた記録」の1つにすぎません。

「こんなの使わない」は、半分だけ当たっている

最初の「こんなの将来使わないでしょ」に、正面から答えます。

半分は、当たっています。買い物の計算は、小学5年生までの算数で足ります。x²+5x+6 を (x+2)(x+3) に因数分解する大人は、ほとんどいません。

ただ、勉強の目的は2つあります。

  • 表面の目的:生活でそのまま使う知識。買い物の計算、漢字、英会話
  • 本当の目的:その奥で鍛えている力。筋道を立てて考える、人の話を理解する、数字をもとに判断する

「使わない」と言うとき、見ているのは表面の目的だけです。鍛えているのは知識そのものより、考える力のほう。

たとえば数学。三角関数をそのまま仕事で使う人は、一部です。でも、スマホの料金プラン、家を買うか借りるか、どの大学に行くか。大事なことを決めるたびに、数字をもとに自分の頭で考える力を使います。この力が弱いと、人のうわさや、声の大きい人の意見に振り回されます。

国語・英語・理科・社会で鍛えている力と、小池が仕事で因数分解の考え方をどう使っているかは、人間力の記事の「因数分解は使わない。でも、因数分解の考え方は毎日使う」にまとめました。

「使わない」と言いたくなるのは、だいたい中2

この言葉がいちばん増えるのは、中学2年生です。理由はだいたい4つ。

  • 部活と勉強で、毎日がとにかく忙しい
  • 小1から8年続けてきて、飽きてくる
  • テストの点と順位で、自分の位置が見えてしまう
  • 来年は受験。このままでいいのか、不安になる

どれも自然なことです。だから保護者の方も、お子さんが「使わなくね?」と言い出したら、叱るより「表面の目的と、本当の目的があってね」と話してあげてください。

働く大人が「役に立った」と答えるのは、国語・英語・数学

では、実際に働いている大人は、どの教科が役に立ったと言っているのか。2つの調査を並べます。マイナビは2015年に社会人471人へ「中学の授業で、一番人生の役に立っている科目」を、オリコンは2007年に20〜40代の働く人900人へ「社会に出てから役立った科目」を聞いたものです。

マイナビ(2015年)オリコン(2007年)
1位国語 27.8%国語 29.6%
2位英語 20.4%英語 26.9%
3位数学 18.0%数学 26.2%

8年あいた2つの調査で、上位3つは同じ国語・英語・数学です。

中学生のうちは「これからは英語さえできれば」と思いがちです。英会話教室の広告を毎日のように見ていれば、無理もありません。でもそれは、まだ働いたことがない人のイメージです。働いてみた人の答えは、国語がいちばん上。数学も英語とほぼ並びます。

そして、この3教科は、私立高校の入試の3教科と同じです。会社の就職試験でよく使われる SPI も、中身は「言葉の力」と「数の力」、つまり国語と数学の延長です(くわしくは人間力の記事)。高校も会社も、役に立つ力を持っている人がほしい。だから、その力を試験で見ます。

「英語だけやればいい」「好きな科目だけでいい」が危ない理由

外国で働くには、英語+αが要る

「外国で働きたいから、英語だけやればいい」。これもよく聞きます。

日本に働きに来ている外国の人を思い浮かべてください。日本語が話せるだけだと、選べる仕事は限られます。外国に行けば、その国の言葉が話せるのは当たり前。言葉の上に、何ができるかで勝負が決まります。

外国で働く日本人の多くは、世界に拠点を持つ大きな会社の社員です。トヨタ、三菱商事、Google。こうした会社に入るのは、ほとんどが難関大学の卒業生。英語だけでなく、国語も数学もできる人たちです。

小池の中学の同級生80人のうち、英語を使って働いているのは3人です。車のデザイナー、脳外科医、住宅会社で海外の木を扱う開発の仕事。3人とも、英語だけでなく全教科ができました。

好きな科目だけにした国がある

アメリカの高校では、1960〜70年代に選べる科目が一気に増えました。すると、生徒は易しい科目を選ぶようになった。1964年に12%だった「大学に行くための勉強をしないコース」の生徒は、1979年には42%になりました。

1983年、レーガン政権の教育長官がつくった委員会が『危機に立つ国家』という報告書を出します。そこには、17歳の約13%が読み書きを十分にできないこと、大学入試の共通テスト(SAT)の平均点が1963年から1980年まで下がり続けたことが書かれていました。そして、原因の1つを前菜やデザートがメインの料理と取り違えられやすい、カフェテリアのような授業の選び方だとしました。

報告書が出した答えは、高校の4年間で「英語4年、数学3年、理科3年、社会3年」を全員に学ばせること。好きなものだけを選べる形から、基本の教科に戻したのです。

5歳の子に「好きなものを食べていいよ」と言えば、お菓子とアイスを選びます。栄養のことを知らないからです。働いたことのない中学生が、役に立つ科目を自分で選んで絞り込むのも、同じことです。

日本の中学の勉強は、世界でもトップレベル

「外国の教育はすごい」というニュースを見ることがあります。でも、15歳の学力を国ごとに比べる国際調査(PISA、2022年)で、日本はこうなっています。

分野OECD加盟37か国の中81か国・地域の中
数学1位5位
読解力2位3位
科学1位2位

皆さんが今やっている5教科は、世界で通用する基礎です。外国の教育がよく見えても、日本の中学の勉強で手を抜いていい理由にはなりません。

勉強は、自分の未来のために

もう一度、最初の話に戻ります。

「親に言われたからやってる」
「こんなの意味ない」

そう感じるのは自然なことです。でも本当は、皆さんが今やっている勉強は、将来の自分が、好きな仕事を選んで、楽しく、ちゃんと稼ぎながら続けるための準備です。

まとめると:

  • ワクワクする仕事は、どれも皆さんにチャンスがある
  • やりたいことは変わる。今の答えが最後じゃない
  • 大学に行けば、いろんな業界の上流を選べる。インターンで試してから決められる
  • 勉強のいちばんの意味は、学歴より「自分から楽しんで、やり切る力」を鍛えること
  • 「使わない」は表面の目的だけを見た言葉。本当の目的は、考える力を鍛えること
  • 働く大人が役に立ったと答えるのは、国語・英語・数学。好きな科目だけに絞らない

やりたいことが見つかったとき、そこに行ける自分でいてください。

勉強は、誰のためでもない。自分のため。一緒にやっていきましょう!

ランゲージ・ラボラトリー 小池

参考にした調査

  • マイナビ 学生の窓口「社会人に聞いた!中学校の授業で習った科目で、一番人生の役に立っているもの」(2015年4月、社会人471人)
  • オリコン「社会に出てから役立った科目」(2007年1月、20〜40代の会社員・公務員など900人)
  • 国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査 PISA2022 のポイント」(2023年12月)
  • National Commission on Excellence in Education, A Nation at Risk(1983年4月)
  • Jeffrey Mirel, “The Traditional High School”, Education Next(2006年)

この記事を書いた人

小池哲平のアバター 小池哲平 ランゲージ・ラボラトリー塾長

ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて

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