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ランゲージ・ラボラトリーの小池です。
「将来、東京に出たい」と思っている人。 「ずっと館山にいたい」と思っている人。
どちらも正解です。ただ、決める前に知っておいてほしいことがあります。東京で働くのは、楽しい。そして、大変。
僕は、18歳から28歳まで、ちょうど10年間を東京で過ごしました。
今日は、そうやって東京で学び、働いてから館山に戻ってきた僕が、東京の良いところと大変なところ、田舎の良いところと弱いところを、両方書きます。最後に、僕がずっと考えている「3年東京修行説」の話をします。


東京のいちばんの強みは、集まっていることです。
日本の大企業の本社は、ほとんどが東京にあります。新しい情報も、お金も、優秀な人も東京に集まる。だから、東京でしかできない仕事が、今もたくさんあります。
特に、情報・IT の最先端はやっぱり東京です。新しいサービスは東京の会社で生まれ、勉強会やイベントも東京で毎週のように開かれています。行こうと思えば、電車で30分の場所に、その道の第一人者がいる。これが東京です。




「でも今は、リモートワークがあるから、どこにいても働けるんじゃないの?」
そう思う人もいると思います。実は、流れは逆です。
コロナのとき、IT企業はいち早く家で働く形(リモートワーク)に切り替えました。ところが、コロナが落ち着いたあと、出社に戻す会社が次々に出てきています。
リモートワークを一番うまく使えそうなIT企業が、なぜ戻ってくるのか。
理由は、人が集まって一緒に仕事をすると、情報が行き来するからです。
アメリカの大きな会社のエンジニアを調べた研究があります。チーム全員と同じ建物で働く人は、離れた建物で働く人より、自分の書いたプログラムへのアドバイスを約2割多くもらっていました。そして、その差がいちばん大きかったのは、入ったばかりの新人と若手でした。
家でひとりパソコンに向かってカタカタ打っているだけだと、孤独です。隣の先輩に「これ、どうやるんですか?」と5秒で聞けない。先輩が電話でお客さんと話しているのを、横で聞いて覚えることもできない。
塾も同じです。家でひとりで勉強するより、塾に集まって勉強したほうがはかどる。隣で友達が集中していると、自分も頑張れる。わからないことを、すぐ先生に聞ける。大人の仕事も、まったく同じです。


仕事の仕方は、教科書ではなく「隣の人」から覚えるものです。だから、若いうちほど、優秀な人の近くにいることに意味があります。


ここまで読むと「じゃあ東京一択だ」と思うかもしれません。でも、東京には大きな弱点があります。
物価が高い。何より、家賃が高い。
数字で見てみます。
| 1か月 | |
|---|---|
| 大学卒の初任給全国の平均 | 約26万円 |
| 税金・社会保険を引いた手取り | 約20万円 |
| 東京23区のワンルームの家賃 | 約8〜13万円 |
| 食費・電気・ガス・水道・スマホなど | 約6〜8万円 |
| 残るお金 | ほぼゼロ |
初任給が25万円あっても、手取りは20万円ほど。家賃で10万円消えて、生活費を払ったら、ほとんど何も残りません。
しかも、その10万円で借りられる部屋は、とても狭い。
例えば、品川駅から歩いて10分のところで一人暮らしをすると、よくあるのはこんな部屋です。


「6畳」というのは、畳6枚分の広さです。皆さんの子ども部屋と同じくらいだと思います。
東京で一人暮らしをすると、そのサイズの部屋ひとつで生きていかなければいけません。 寝るのも、ご飯を食べるのも、勉強するのも、服をしまうのも、友達が来たときも、全部その6畳です。ベッドと机を置いたら、残る床は畳4枚半ほど。キッチンは廊下にくっついていて、コンロはひとつ。お風呂とトイレは同じ部屋、ということもよくあります。
壁も薄い。友達を呼んで家で飲み会をやれば、隣の部屋から壁をドンと叩かれます。
館山なら、もっと安い6〜9万円で、部屋が2つとリビングがある家(2LDK)に住めます。広さは、品川の1Kのおよそ3倍です。東京は、高いお金を払って、狭い部屋に住む街です。
車も、東京では基本的に持てません。駐車場代だけで、田舎の家賃くらいかかるからです。
体を動かす場所も、なかなか取れません。
僕が東京でテニスをやろうと思って、コートを予約しようとしたときのことです。予約は抽選で、ほとんど当たりません。翌月の日にちを先に決めて抽選に申し込み、当たるか当たらないか。テニスをするのに、1か月前から運だめしです。
野球場も、電話1本で取るなんてことはできません。キャッチボールをする場所すら見つかりません。
館山なら、空いているコートやグラウンドに電話をすれば、たいてい使えます。海に行けば、キャッチボールもできます。
東京では、遊ぶのは全部お金がかかります。街を歩いていると疲れるので、しょっちゅうカフェに入って休憩する。座るのにすら、お金がかかる。それが東京です。
東京は、楽しい。でも、若いうちにずっと住み続けて、貯金をしたり、家を建てたりするのは、かなり大変な場所です。




そこで、僕の中には「3年東京修行説」という考えがあります。
18歳から25歳くらい、いちばん多感な時期に、東京で3年間修行する。大きな会社で給料をもらいながら、技術と仕事の仕方を覚える。
そして3年たったら、選べばいい。
大事なのは、若いうちに「一番高い基準」を体に入れておくことです。基準さえ入っていれば、そのあとどこで何をしても通用します。
美容師で考えてみます。
まず3年間、東京の有名な美容室で働く。毎日、夜12時を過ぎるようなハードな働き方の中で、カットの腕を磨く。お客さんが絶えない店が、どうやってお客さんを集めているのか、SNSの見せ方やお店の宣伝の仕方も、横で見て覚える。
そのあと地元に戻って、自分の美容室を開く。
東京の一流の腕と、一流のお客さんの集め方を持った人が、家賃の安い地方で店を開く。これは、とても強いと思います。






僕自身の話をします。
僕は大学を出て、東京のリクルートという会社で、IT業界の会社を担当する営業をしていました。周りには、ものすごく仕事ができる人がたくさんいました。毎日夜遅くまで働くのが当たり前。新しいことを学び続けるのが当たり前。求められる仕事の水準が、とにかく高い。
その東京で、僕の中の「当たり前の基準」が上がりました。
そして館山に戻って、塾を始めました。
少し失礼な言い方になるかもしれませんが、館山に来て、毎日12時まで働くのが当たり前だという人や、最先端のことを学び続けようという人、仕事にこれだけ高い水準を求める人は、そこまで多くありませんでした。
だからこそ、東京で身につけた基準が、そのまま館山での強みになりました。東京では「普通」だったことが、地方では「すごい」になる。3年東京修行説は、僕の実体験から来ています。


では、田舎はどうか。これも両方あります。
東京で同じ暮らしをしようとしたら、かなりのお金持ちでないとできません。お金で見ると、田舎の暮らしは実は豊かです。
田舎は「暮らす」には強い。でも「仕事を選ぶ」「大きな仕事をする」「学ぶ」には弱い。
東京は、その逆です。
ただ、ここに大きなチャンスがあります。
田舎は、仕事の種類が少ない。ということは、東京では当たり前になっている技術やサービスが、田舎にはまだないことが多い。同じことをしているライバルも少ない。お店や事務所の家賃も、東京よりずっと安い。
だから、東京で身につけた技術を活かして田舎で商売ができたら、しっかり儲かるチャンスがあります。 美容師の例も、僕の塾も、まさにこれです。
お金もしっかり稼げて、そのうえで、広い家・車・海のある田舎の豊かな暮らしも楽しめる。東京と田舎の、いいとこ取りができます。


ここまで、東京の大変なところをたくさん書きました。お金は残らない。部屋は狭い。遊ぶ場所もない。
それでも僕は、東京に行って本当によかったと思っています。東京で身につけたものは、家賃のように毎月消えていかないからです。
僕が東京の10年で身につけたのは、こんな力です。
面白いのは、細かい技術ほどすぐ古くなることです。僕は大学時代に、ホームページを作るための HTML を一生懸命覚えました。でも今は、文字を打てばサイトができる時代。その技術は、ほとんど使わなくなりました。
古くならないのは、「どこまでやるのが当たり前か」という物差しと、新しいことを学び続ける力です。これは、どこに住んでも、何の仕事をしても、一生使えます。
館山でずっと暮らし、地元を支えている人は立派です。どちらが偉いという話ではありません。
ただ、「当たり前の基準」は、自分が見てきた世界の広さで決まります。ずっと館山にいると、館山の当たり前が、自分の当たり前になる。東京で一流の人たちの中に3年いると、一流の当たり前が、自分の当たり前になる。
その差は、20代ではほとんど見えません。でも、30代、40代と年を重ねるほど、仕事の中身の差になって、はっきり表れてきます。僕が館山で塾を始めて、東京で身につけた基準がそのまま強みになったのは、まさにこれです。
若いうちに東京で身につけた物差しは、一生ものの財産です。 そして、その財産を持って館山に帰ってくれば、館山の豊かな暮らしと、東京の一流の仕事の両方を手に入れられます。


ここまで「3年たったら館山に帰る」という話を多く書きましたが、東京で暮らし続けるのも、りっぱな選択です。
例えば、大企業に入る。給料の高い会社なら、30歳前後で年収1000万円を超える人もいます。そして、同じ会社で出会って結婚する人は結構多い。相手も年収1000万円なら、家族の年収は2000万円です。そうなれば、豊洲のあたりにタワーマンションを買って、東京で生きていくこともできます。
ちゃんと稼げれば、東京の暮らしは本当に楽しい。
狭い部屋で節約する20代を越えて、しっかり稼げるようになった人にとって、東京はとても面白い街です。
整理すると、道はいくつもあります。
どれが正解かは、人によって違います。そして、自分がどれを好きかは、やってみないと、見てみないとわからない。 東京の満員電車が平気な人もいれば、3日で嫌になる人もいる。狭い部屋でも、最先端の街にいるほうがワクワクする人もいれば、海の見える広い家がいちばん落ち着く人もいる。中学生の今、それを決めてしまう必要はありません。
もちろん、今のうちから考えておくのは大事です。でも、実際にやってみると、思わぬところで「あれ、違った」となることが、たくさんあります。
子どものころからずっと「こうなりたい」と思っていて、それが本当に叶った。なのに、やってみたら「やっぱり違うわ」となる。これは、めちゃくちゃよくあることです。
だから、夢を描くのは大事。でも、決めつけすぎない。 そして、どの道になっても選べるだけの実力をつけておく。
大事なのは、いざ選ぶときに、選べる立場になっていることです。
何度も言いますが、ここでいう実力とは、基本的に人間力です。
スキルは、すぐに古くなります。僕の HTML がそうだったように。それに、スキルは勉強すれば身につきます。本当に必要になったら、そのときにすぐ覚えられる。
古くならないのは、答えのない問題に向き合って、自分の頭で考えて、失敗しながらやり切る力です。東京で身につく「高い当たり前」も、ゼロから追いつく力も、この人間力の一部です。


そして、中学生の今、その人間力をいちばん鍛えられるのが、目の前の勉強です。わからない問題から逃げずに考える。決めた量を、決めた日までにやり切る。点が取れなかったら、やり方を変えてもう一度やる。
もうひとつ、現実的な話もしておきます。東京の大きな会社で修行するにも、東京で稼ぎ続けるにも、まず、その会社に入れないといけません。そして、人気の会社ほど、大学で入口が決まります。今の勉強は、将来の選択肢を自分の手に残しておくための勉強でもあります。
多感な時期に、いろんなものを見て、一流の人の中で自分を鍛える。そのうえで、自分の好きな場所と生き方を、自分で選ぶ。そのための準備を、今、目の前の勉強からしていきましょう。
ランゲージ・ラボラトリー 小池






ランゲージ・ラボラトリー塾長、東進衛星予備校 館山校オーナー。安房郡白浜町(今の南房総市白浜町)に生まれ、白浜中から安房高校へ。高2で学年82人中81位まで落ちたところから、浪人して慶應義塾大学経済学部に合格しました。リクルートで4年働いたあと2011年に1993年開校の塾を先代から引き継ぎ、2015年から館山で小中学生を教えています。2026年卒の中学3年生は30名中8名が学年1位。志学館高校のSS特待には3年続けて合格者を出しています(2024年4名・2025年5名・2026年6名)。東進館山校は2026年の共通テストで平均+218.4点(千葉県内1位)。館山・南房総の高校入試を、塾で見てきた事実と数字で書いています。
塾長のプロフィール ランゲージ・ラボラトリーについて